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Boom Bapミックステンプレートの作り方|パラアウトを貼るだけで“自分の音”に仕上げる量産テンプレ

ミックス2026年7月4日
本記事はアフィリエイト広告(PR)を含みます。
Boom Bapミックステンプレートのイメージ

ビートを作るのは楽しいのに、いざミックスとなると急に腰が重い……。トラックごとにEQを立ち上げて、コンプを挿して……と毎回同じ作業をイチから繰り返すのが正直めんどくさくて。しかも「前はどんな設定にしてたっけ?」と毎回思い出すのも地味に手間で、ミックスに取りかかるのが億劫だったんです。

そこで作ったのが、このBoom Bap専用のミックステンプレートです。ルーティングとチェーンをあらかじめ組んで固定しておき、パラアウト(各パートの書き出し)を決まったトラックに貼るだけもう毎回プラグインを挿し直す必要がなくなり、しかも毎回同じ質感=「自分の音」で仕上がります。ミックスに取りかかるハードルが下がって、量産するときに本当に楽になりました。

この記事では、私が実際に使っているテンプレートの全ルーティング・トラック別のチェーン・数値まで丸ごと公開します。使っているプラグインも全部紹介しますが、持っていなくても大丈夫。お持ちのEQやコンプで同じ「考え方」を再現できるように、要点も一緒に書いています。

狙うのは、Pete Rock / Lord Finesse / J Dilla / Joey Bada$$ / Da Grassroots のような、丸くて埃っぽい上物+ブーミーで太いドラム。キラキラさせず中域重視、ステレオは狭め、音圧は攻めすぎずパンチを残す方向です。想定は Pro Tools・85〜95bpm ですが、考え方はどのDAWでも同じです。

Boom Bapの音作りの記事 パラアウト前の「音作り」は別記事にまとめています →この記事はパラアウトを貼ったの仕上げの話です。サンプルの選び方やループそのものを太くする音作りは、こちらの記事へ。先に音を作り込んでからこのテンプレに貼ると効果的です。
はじめに(大事なことわり):これは自分の備忘録も兼ねて、普段やっているミックスの手順を記事にしてみたものです。完全な自己流なので、あくまで一例・参考として見てもらえたら嬉しいです。数値や設定は曲・素材によって最適解が変わります。そのまま貼って終わりではなく、必ず自分の曲に合わせて耳で調整してくださいね。
まず覚えるのはこの2つだけ。
① ルーティング(誰がどのバスに行くか)を固定する。
② カテゴリごとの標準チェーンを決める。
この2つさえ決まれば、あとは音を貼るだけです。細かいコツは、詰まったときに読み返してもらえればOK。

1. 全体ルーティング

サブバスは2系統です。ドラム/パーカスは Drum Bus、鍵盤・弦は 上物バス にまとめて、それぞれにグルーコンプ。Bass だけは独立させて Master に直で送ります(理由は下で説明します)。Reverb / Delay はセンドで受けます。

Kick / Snare / HihatSleigh Bell / Shakerドラム・パーカス Bassエレキ / ウッド / サブ Piano / RhodesStrings Reverb / Delay(センド) Drum Busグルー 4:1 / GR 3〜6dB バスを通さない単体処理のみ 上物バスグルー 2:1 / GR 1〜2dB MASTERTape → Ozone → L4Ceiling −1.0 dBTP目標 −10〜−9 LUFS センド/リターン
全体ルーティング。Drum Bus と 上物バス にグルーコンプ、Bass だけ独立で Master 直、FX はセンドで受ける。

なぜ Bass だけ独立させるのか

Bass を Drum Bus に入れると、バスのグルーコンプがいちばん大きい低音=ベースに反応してしまい、ドラム全体がベースのリズムでポンピング(連動して沈む)します。独立させれば、Drum Bus のグルーは「生ドラムだけ」に効いて、狙いどおりにまとまります。これはかなり効くので、最初に押さえておいてください。

バス受けるトラック処理
Drum BusKick / Snare / Hihat / Sleigh Bell / Shakerグルーコンプ 4:1・GR 3〜6dB
上物バスPiano / Rhodes / Strings(+上ネタ)グルーコンプ 2:1・GR 1〜2dB
Bass(独立)Bass のみ単体処理のみ → Master 直
Master全体集約Tape → Ozone → L4(Ceiling −1.0)

2. トラック別の標準チェーン

各トラックの「インサート順」と、Boom Bap向けの狙い所です。数値は出発点。最後は耳で微調整してください。プラグイン名にはリンクを付けていますが、持っていない場合は各セクションの「お持ちのプラグインで再現するなら」を見れば、自分のEQ・コンプで同じことができます

先に各プラグインの役割を押さえると読みやすいです
ZL Equalizer 2(無料の高機能EQ)=このテンプレでは各トラック頭のローカットに使っています。FabFilter Pro-Qに影響を受けた無料EQで、可変周波数+スロープの本物のハイパスにアナライザーを内蔵。「不要な低域だけを、耳と目で確認しながらクリーンに削れる」——という理由でこの用途に充てています。Pro ToolsのEQ IIIなど手持ちのハイパスでも同じことができます。
IDX=周波数依存の自動ダイナミクス(チェーンの下地)
H-Comp / RComp=コンプ(キャラ付け/音量ならし)
Curves Equator=濁り・被りを自動で整理するインテリジェントEQ(※HPF/LPF用ではありません)
Kramer Tape / RC-20 / RX950=テープ・ローファイの質感
API 560=チェーンの最後段に置くグラフィックEQ。最後の任意の手動EQ微調整(トーンのブースト/ロールオフ)用。フェーダーを数本動かすだけでいいのが魅力(=シンプル)。

つまり各チェーンの先頭の「ローカット◯◯Hz」は、すべて先頭の ZL Equalizer 2(または手持ちのハイパス)で行っていると読んでください。濁り・被りの自動整理は Curves Equator が担当し、「上を10-12kHzでロールオフ」などトーンの最終微調整はチェーン最後段の API 560で仕上げます。

まとめると、ローカット=先頭の ZL Equalizer 2、最後の仕上げEQ=最後段の API 560です。

ちなみに最初にローカットしておくと、そのあとコンプをかけたときに"欲しい帯域"がきれいに持ち上がります(不要な低域でコンプが無駄に反応しないため)。IDX も同じく下地を整える役割です。

なお IDX・Curves Equator・RC-20・テープ系の“かけ具合(量)”は、数値というより耳で合わせてください。IDXは主ノブ1つを軽め〜中程度、Curvesは自動解析後に効きを少しだけ、テープ/RC-20はうっすらが基本。どれも「かけすぎない」のがBoom Bapのコツです。

無料でローカット用のEQを探すなら、いま最強は ZL Equalizer 2FabFilter Pro-Qに影響を受けて作られた無料EQで、可変スロープの本物のハイパス・最大24バンド・ダイナミックEQまで備え、「これで無料?」という完成度です。EQ III や Pro-Q を持っていなくても、各トラック頭のローカットはこれ1台で十分こなせます。

さらに余裕があれば、このチェーンに味付けのEQ処理(好みの帯域を軽くブースト/カット)を足したり、トラック同士のマスキング(帯域の被り)も整えてみてください。マスキング処理を手っ取り早くやりたいときは sonible pure:unmask がおすすめ。AIが2つのトラックの被りを自動で避けてくれるので、サイドチェインを繋いでプロファイルを選ぶだけ(=Curves Equatorの自動整理と同じ発想を、より手軽に)。Plugin Boutiqueで購入できます。
STEP1:まずはローカットで「不要な低音」を整理する

なぜ最初にローカットなのかというと、ミックスで一番混雑しやすいのが低域だからです。
どの楽器にも多少の低音は含まれています。必要のないローエンドまで積み重なると、キックやベースの居場所がなくなり、全体がモコモコと濁って聴こえてしまいます。
逆に言えば、最初に不要な低域を整理しておくだけで、その後のEQやコンプもずっと判断しやすくなります。私はミックスを始めるとき、まず最初に各トラックのローカットを済ませることがほとんどです。

ローカットで得られること
ローカットは「低音を減らすため」の処理ではありません。不要な成分だけを取り除いて、必要な低音を活かすための作業です。その結果として、
・キックやベースが埋もれにくくなる
・ミックス全体がクリアになる
・コンプやリミッターが余計な低域に反応しにくくなる
・ヘッドルームに余裕ができ、音圧も上げやすくなる
といったメリットがあります。

私がやっているローカットの手順
難しいことはしていません。まずソロで聴きながら、音のキャラクターが変わらないギリギリまでハイパスフィルターを上げます。そのあと必ずオケ全体で聴き直します。ソロでは問題なくても、ミックスの中では細くなりすぎることもあるからです。最後に必要なら少し戻して完成。この「ソロで探して、全体で確認する」という流れだけ覚えておけば十分です。
もちろん、キックやベースのように低域が主役の楽器は別。そういったトラックは基本的にローカットしないか、行うとしてもかなり慎重に判断します。

使用するEQ
ローカットはどんなEQでもできますが、アナライザーが付いているものだと作業がかなり楽になります。無料で始めるなら、私は ZL Equalizer 2 をおすすめします。アナライザーを見ながらハイパスフィルターを調整できるので、「耳だけでは判断しづらい」という人にも使いやすいEQです。この記事で「◯◯Hzでローカット」と書いている部分は、このEQでも、手持ちのEQでも同じように再現できます。

Kick → Drum Bus

1IDX(Soft)2ZL Equalizer 23H-Comp(PhatKick / GR 3〜4dB)4Curves Equator(Kick)5API 560(仕上げEQ)
Boom Bap設定(どのプラグインで何をするか):
【IDX(Soft)】まず下地として軽く。
【ZL Equalizer 2】ローカット(サブソニックなど不要な低域を削る)。
【H-Comp(PhatKick)】GR 3〜4dB でパンチを付ける。
【Curves Equator(Kick)】濁り・被りを自動で整理。
【API 560】最後に手動でEQ微調整:重心 60〜100Hz を軽く上げ/150〜300Hz のこもりを少し下げ/クリックを 2〜4kHz で少し(8kHz以上は不要)。
狙いは、サブより「ドスッ」を優先。
お持ちのプラグインで再現するなら:お使いのEQで 80Hz付近を+2〜3dB/200Hz付近を−2〜3dB/3kHzを少し。コンプは Ratio 4:1・GR 3〜4dB でアタックはやや遅め(クリックを残す)。EQ1台+コンプ1台で十分同じ方向に持っていけます。

Bass → 独立 → Master

1IDX(Soft)2Kramer Tape3H-Comp(Bold Bass)4Curves Equator5RComp6MaxxBass
Boom Bap設定(どのプラグインで何をするか):
【IDX(Soft)】下地として軽く。
【Kramer Tape】うっすら歪ませてグリット。
【H-Comp(Bold Bass)】キャラ付けコンプ。
【Curves Equator】キックの山(60〜80Hz)をベース側で1〜2dB避ける(相補EQ)+濁り整理/上は 4〜5kHz でロールオフ気味。
【RComp】音量ならし(Ratio 3.99/Atk 0.50/Rel 5.00/Gain 0.0/Warm)。
【MaxxBass】最後に倍音を足して可聴化(クロスオーバー 60〜80Hz 目安)。コンプの後ろに置くことで、足した倍音を潰さず・低域のポンピングも避けられます。
【低域処理】120Hz以下は必ずモノ/25〜30Hz以下はHPF。
お持ちのプラグインで再現するなら:チェーンの本質は 「低域をモノにする → 倍音を足す → テープで少し歪ませる → 均す → 相補EQ」。お使いのユーティリティで120Hz以下をモノ化し、サチュレーター/テープ系で軽く倍音を足し、コンプで音量ムラを均せばOK。プラグインの名前が違っても順番と役割は同じです。

Snare → Drum Bus

1IDX(Soft)2Kramer Tape3RComp4Curves Equator(Snare)5API 560(仕上げEQ)
Boom Bap設定(どのプラグインで何をするか):
【IDX(Soft)】下地。
【Kramer Tape】強めにかけてザラつきを。
【RComp】Ratio 2.00/Gain 3.3/Atk 0.50/Rel 5.00/Warm でレベルを均す。
【Curves Equator(Snare)】濁りを自動で整理。
【API 560】最後に手動でEQ微調整:胴鳴り 180〜250Hz を少し足して太く/パチッを 3〜5kHz/8kHz以上のシャリを抑える。
あわせて Reverb センドは多めに。
お持ちのプラグインで再現するなら:EQで 200Hz を少しブースト/4kHz を少し/8kHz以上を抑える。テープ/サチュ系でザラっとさせて、リバーブ送りを多めに。これだけで一気にBoom Bapのスネアになります。

Hihat → Drum Bus

1ZL Equalizer 22Curves Equator(Hi Hat)3API 560(仕上げEQ)
Boom Bap設定(どのプラグインで何をするか):
【ZL Equalizer 2】ローカット(低域 300〜500Hz 以下を削る)。
【Curves Equator(Hi Hat)】濁りを自動で整理。
【API 560】最後に手動でEQ微調整:上を 10〜12kHz でロールオフ(キラキラさせない)。
音量は控えめでドラムに馴染ませる。
お持ちのプラグインで再現するなら:お使いのEQで 400Hz以下をハイパス、12kHzから上をローパス。派手にせず、音量を下げて奥へ。EQ1台で完結します。

Sleigh Bell / Shaker → Drum Bus

1ZL Equalizer 22Curves Equator(Bell / Percussion)3API 560(仕上げEQ)
Boom Bap設定(どのプラグインで何をするか):
【ZL Equalizer 2】ローカット(低域を大きく削る)。
【Curves Equator(Bell / Percussion)】濁りを自動で整理。
【API 560】最後に手動でEQ微調整:高域を 10〜12kHz でロールオフ。
細かく刻む音なので音量は控えめに(Hihat と同じパーカス標準)。
お持ちのプラグインで再現するなら:Hihat と全く同じ考え方。低域ハイパス+高域ローパス+音量控えめでドラムに溶かします。

Piano → 上物バス

1IDX(Soft)2ZL Equalizer 23Curves Equator(Piano)4RComp(上ネタ共通)5RC-20(Vinyl 2)6 RX950(任意)7API 560(仕上げEQ)
Boom Bap設定(どのプラグインで何をするか):
【IDX(Soft)】下地。
【ZL Equalizer 2】ローカット(100〜120Hz 以下を削ってキック・ベースの場所を空ける)。
【Curves Equator(Piano)】濁りを自動で整理。
【RComp】上ネタ共通の設定(Ratio 1.30/Atk 0.50/Rel 5.00/Gain 3.0/Warm)でレベルを軽く均す。
【RC-20(Vinyl 2)】ローファイな質感を足す。
【RX950】必要ならサンプラー感を追加(任意)。
【API 560】最後に手動でEQ微調整:上を 10〜12kHz で LPF して埃っぽく。
お持ちのプラグインで再現するなら:120Hz以下ハイパス+12kHzから上ローパスで居場所を作り、ローファイ/ヴァイナル系のエフェクトで質感を付ければ同じ方向です。

Rhodes → 上物バス

1IDX(Soft)2ZL Equalizer 23Curves Equator(Electric Piano)4RComp(上ネタ共通)5 RC-20(任意)6API 560(仕上げEQ)
Boom Bap設定(どのプラグインで何をするか):
【IDX(Soft)】下地。
【ZL Equalizer 2】ローカット(100〜120Hz 以下を削る)。
【Curves Equator(Electric Piano)】濁りを自動で整理。
【RComp】上ネタ共通(Ratio 1.30/Atk 0.50/Rel 5.00/Gain 3.0/Warm)。エレピは揺れが出やすいのでレベルを均す。
【RC-20】質感を足す(任意)。
【API 560】最後に手動でEQ微調整:上をロールオフして角を取る。
お持ちのプラグインで再現するなら:Piano と同じ処理に 軽いコンプ(GR 1〜2dB)を1台足すだけ。音量の揺れを軽く均すのが狙いです。

Strings → 上物バス

1IDX(Soft)2ZL Equalizer 23Curves Equator(Strings)4RComp(上ネタ共通)5Stereo Width 110〜130%6 Center(任意・出過ぎ抑え)7 RC-20(任意)8API 560(仕上げEQ)
Boom Bap設定(どのプラグインで何をするか):
【IDX(Soft)】下地。
【ZL Equalizer 2】ローカット(100Hz 以下を削る)。
【Curves Equator(Strings)】濁りを自動で整理。
【RComp】上ネタ共通(Ratio 1.30/Atk 0.50/Rel 5.00/Gain 3.0/Warm)。
【Stereo Width】広げても 110〜130% までに留める(100%が原音。広げすぎない)。
【API 560】最後に手動でEQ微調整:上を 10〜12kHz で LPF。
【Center(任意)】センターに出過ぎた成分が気になる時に、Waves Center で中央成分だけ下げて整える(M/S)。
あくまで奥に敷く役です。
お持ちのプラグインで再現するなら:ステレオを広げすぎないのが肝。ワイドナーは110〜130%程度に留め、上下をロールオフして奥へ。ステレオ系プラグインが無ければ、そのままモノ寄りで置いてOKです。

その他の上ネタ(シンセ/サックス/ギター等)の当てはめ方

上ネタは全部 上物バス に送り、Piano/Strings と同じ並び(EQ → 均し → Curves Equator → 軽いコンプ → 質感)から始めてOK。変えるのは「コンプ量」と「上のロールオフ量」の2つだけです。

迷ったらこの2軸だけ:
① 生・ダイナミックな音ほどコンプを強めに(サックス > ギター > シンセ)。
② 明るい音ほど上を強めにロールオフ。
チェーンの並びは全上ネタ共通で使い回せます。

3. サンプリングした上ネタ(2チャンネル用意)

チョップしたサンプルは、それ自体に低音が入っているか否かで扱いが変わります。違いは実質「頭のハイパスの位置」だけ。2つのプリセットチャンネルを用意して使い分けます。どちらも 上物バス 送りです。

① サンプルにベースなし(自分のベースを足す)

1ZL Equalizer 2(HPF 120〜300Hz)2Curves Equator3RComp(上ネタ共通・軽く)4RC-20510〜12kHz ロールオフ
Boom Bap設定:Pete Rock / J Dilla の「サンプルを上に敷く」定番。低域は自分のキック+ベースが担当するので、サンプルの低域は捨てて上物として乗せる。

② サンプルにベースあり(サンプルが低音も兼ねる)

1ZL Equalizer 2(HPF 30〜60Hz)2100〜120Hz以下モノ3Curves Equator4RComp(上ネタ共通・軽く)5RC-20
Boom Bap設定:サンプルを「1つの完成ミックス」として扱う。超低域のゴミだけ取り、キックとぶつかる低域だけ処理。濁るならキックからサイドチェインを軽く。
お持ちのプラグインで再現するなら:2chとも本質は 「頭のハイパスの位置」だけの違い。ベース無しサンプルは120〜300Hzでばっさり、ベース有りサンプルは30〜60Hzで軽くだけ。あとは上を10〜12kHzでロールオフして質感を足せば、どんなプラグインでも同じ質感に寄ります。
サンプル素材の“下ごしらえ”(EQ→コンプ。クラブミュージックの現場でも王道の手順):
EQ:まず出力を −3dB 下げてから——
・低域が薄い → 60Hz付近をピーキング(中くらいのQ)で +7dB
・輪郭を出す → 400Hz付近を少しきつめのQ+2dB(アナログ感)/−2dB(スッキリ)
・ハイファイに → 9kHz以上をシェルビングで +2dB(好みで)
コンプ:ループはすでに音圧があるので、かけすぎると逆に音圧が下がります。Ratio 1.3:1・アタック/リリース最短・メイクアップ +3dB から(EQで下げた −3dB を取り戻す程度)。オーバーしない所までスレッショルドを下げればOK。
※上ネタの RComp(Ratio 1.30/Atk 0.50/Rel 5.00/Gain 3.0)も、この考え方に沿った設定です。

フィルターがかったサンプルの質感:LPF(上)と HPF(下)で帯域を挟んで絞ると、あの「フィルター済みサンプル」の音になります(Pete Rock / J Dilla 多用)。私のおすすめは Inphonik RX950。名機 Akai S950 をエミュレートしたプラグインで、内蔵フィルターと12bit変換を通すだけで、あのザラっとくすんだ“サンプラー通し”の質感が一発で出ます。サンプルに元から入っているドラム/ノイズが邪魔なら、そこを削って“上物だけ”を抽出するのも定番です。


4. ベースの種類別のコツ(エレキ/ウッド/サブ)

枠組み(低域モノ・キックと棲み分け・上をロールオフ)はどのベースでも共通。違いは「どの帯域を大事に残すか」だけです。

種類大事に残す所処理のコツ
サブベース
(808/シンセ)
超低域(土台)中身がほぼ低域。モノ管理とキックとの音量バランスが主役。必要ならキックから軽くサイドチェイン。上は不要なのでカット。
エレキベース中域 200〜800Hz+指のニュアンスその中域を削りすぎない(スマホで聞こえる芯はここ)。サブは808ほど要らない。テープ/RC-20 でグリット。
ウッドベース
(コントラバス)
低中域 150〜300Hz の木の温かみ+アタックの"ボン"コンプは軽めにして生の跳ねを殺さない。上をロールオフしてヴィンテージ感を出す。ジャジーな路線に合います。
共通ルール(どのベースでも):
① 120Hz 以下はモノ。
② キックの一番鳴る周波数をベース側で1〜2dB避ける(相補EQ・後述)。
③ 25〜30Hz 以下(サブソニック)はハイパスで落とす。
808(サブ)を入れるときのコツ:808 は上の「サブベース」の扱いそのままでOK(独立トラック → Master 直)。特に効くのは次の3点です。
キーに合わせてチューニング(各ノートのピッチ/グライド)。外れた808は全部とケンカします。テールの長さも整えて濁りを防ぐ。
可聴化はEQでなくサチュ/歪みで。純粋な808は小型スピーカーに成分が無いので、下の「並行歪みレイヤー」(808を複製 → コピーをガッツリ歪ませ → 120〜200HzでHPF → クリーンな808の下に薄く混ぜる)が特に効きます。
キックと808の住み分け。下の「キック→ベースのサイドチェイン」で一瞬だけダッキング+相補EQで、どちらかが深いサブ(40〜80Hz)、もう一方がノック(100〜200Hz+2〜4kHz)を担当。
※Trap寄りの808なら、サチュとサイドチェインは強め、高域は削らない方向に振るとハマります。

サブの可聴性は「EQ」ではなく「サチュ/MaxxBass」で作る

これは知っておくと得します。純粋なサブ(サイン波に近い音)は上に成分が無いので、EQで持ち上げても何も出てきません。一方サチュレーション(歪み/テープ)は倍音を“生成”できるので、スマホやノートPCの小型スピーカーで「ベースが聞こえる」手がかりを作れます。物理的にこれが正解です。

お持ちのプラグインで再現するなら:サブの可聴性はEQでなく倍音生成で作るのがコツ。お使いのサチュレーター/テープ/エキサイター系を「うっすら」かけるだけでOK。専用のベース補強がなくても、軽いディストーションで代用できます。

おすすめ:並行歪みレイヤー(サブ1本運用に最適)。サブを複製 → コピーだけガッツリ歪ませる → その歪みコピーを 120〜200Hz でハイパス(=倍音だけ残す)→ クリーンなサブの下に薄く混ぜる。低域はクリーンのまま、可聴性(倍音)だけ足せます。

キック→ベースのサイドチェイン

ベースにサイドチェイン付きコンプを挿し、キー入力にキックを送ります。キックが当たった瞬間だけベースが少し引っ込んで、キックの重心が濁らず前に出ます。私は C1 comp-sc を使っています。Boom Bap は“ポンピングさせる”のが目的ではなく、“キックに一瞬だけ場所を空ける”のが目的なので、ごく浅くが鉄則です。

Kick Bass GR 1〜2dB だけ沈める 次のキックまでに戻す
キックが当たった一瞬だけベースを 1〜2dB 沈め、次のキックまでに戻す。深く沈めると“ワウワウ”して不自然になる。
パラメータ推奨値狙い
キー入力Kick(サイドチェイン)キックの信号でベースをトリガー
Ratio2:1 〜 4:1浅め。強い比率にしない
ThresholdGR が 1〜3dB になる所Boom Bap は 1〜2dB で十分
Attack5〜15msキックのアタック直後に素早く下げる
Release60〜150ms(Auto可)次のキックまでに戻す
KneeSoft自然に効かせる
お持ちのプラグインで再現するなら:サイドチェイン入力付きのコンプなら何でもOK(DAW標準のコンプでも可)。Ratio 2〜4:1・GR 1〜2dB・Attack 5〜15ms・Release 60〜150ms を入れて、キックをキーに送るだけ。ベースが「ワウワウ」鳴ったら深すぎのサインです。

5. FXリターン(Reverb / Delay)

リバーブ/ディレイは各トラックのセンドで受けます。本体はいじらず、送る量で深さを決めるのがコツ。目安は、スネアに一番多く(ドラムの奥行き)、鍵盤に少し、キックとベースには送らない(低域が濁るため)。

Reverb(センド受け)

1VintageVerb(Room / 1970s / Decay 1.08s / Mix 100%)2EQ(LF −8.8dB / HF −10.2dB で暗く)
Boom Bap設定:暗く奥に沈むリバーブが Boom Bap 向き。リターンなので Mix は 100%(深さは各トラックのセンド量で決める)。低域と高域を削って“暗い部屋”にするのがポイント。

Delay(センド受け)

1Delay(SYNC ON / L=8分・R=16分 / FBK 0% / 100% WET)2EQ(同じ帯域整理)
Boom Bap設定:左右で音価をずらしてステレオの跳ねを作る正当な手法。曲ごとに SYNC のテンポだけ合わせる。モノでうるさければ R も8分に揃える。
お持ちのプラグインで再現するなら:DAW標準のリバーブ/ディレイで十分。リバーブは暗めのRoom+低域と高域をEQで削る、ディレイは左右で音価をずらす(1/8と1/16)。どちらもリターンに立てて、送る量で深さを作れば同じ設計です。

6. バス処理とマスター

Drum Bus(グルー)★Boom Bap の要

1Solid Bus Comp(SSL G系)4:1 / Atk 30ms / Rel Auto / GR 3〜6dB2Transient Master(ノックを出す)
Boom Bap設定:バイパス ON/OFF で「まとまり」がはっきり出るくらい効かせて、ドラムを“ドスッ”と一体化。グルーで丸まったアタックは、次の Transient Master で取り戻します。

Transient Master でノック(ドラムの当たり)を出す:Attack=最初の一撃、Sustain=余韻・胴鳴りを増減。これで「パンチを足す」「タイトに締める」を作ります。※Attack/Sustain は dB ではなく約 −100〜+100 の相対目盛りなので、耳で「当たりが気持ちよく出る最小量」で止めます。

上物バス(グルー)

1Solid Bus Comp 2:1 / Atk 30ms / Rel Auto / GR 1〜2dB(薄く)
Boom Bap設定:鍵盤・弦を薄く接着するだけ。滑らかさ重視なら PuigChild 670 系でも可。
お持ちのプラグインで再現するなら:Drum Bus / 上物バス とも SSL系のバスコンプ(DAW標準のグルーコンプでも可)で。ドラムは 4:1・GR 3〜6dB、鍵盤弦は 2:1・GR 1〜2dB。トランジェントシェイパーが無ければ、コンプのアタックを少し遅めにするだけでも当たりは残せます。

Master(最終段)

FreqAnalyst表示のみ・任意 Tape少し強めに Ozone 11上をロールオフ L4Ceiling −1.0 dBTP OUT
マスター段。Tape で温かみ → Ozone で上を軽くロールオフ+中低域の温かみ・Imager 狭め → L4 で音圧。Ceiling は −1.0 dBTP で固定。
Boom Bap設定:目標は統合 −10〜−9 LUFS。トラップより攻めず、GR を浅めにしてパンチを残す。L4 で触るのは Threshold と Ceiling だけ(Threshold=音圧、Ceiling=−1.0 dBTP で固定)。Mode=Smooth・Stereo Link=100%・True Peak=ON はそのまま。Upward(低レベル持ち上げ)は 1〜2dB までに抑える。

ラウドネスの補足:この −10〜−9 LUFS は“リース/商用のラウド”向けの数値です。Spotify などの配信は約 −14 LUFS に正規化して音量を下げるので、配信で不利になるわけではありませんが、上げれば上げるほど有利…という競争でもありません。ラウドネス診断ツールで自分の書き出しを測っておくと安心です。なお −14 LUFS より大きい“ラウド”な音源を配信する場合、Spotify はトゥルーピークを −2 dBTP 以下にすることを推奨しています(ロッシー変換時のクリップ回避)。上を攻めるなら Ceiling を −1.0 → −2.0 dBTP にしておくと安全です。
なお最適なラウドネスはジャンルでも変わります。トラップやドリルは配信側で −14 前後に正規化される前提で、あえてもっと大きめ(目安 −7〜−9 LUFS)に仕上げる作風も一般的です。Boom Bap はそこまで攻めず、パンチとダイナミクスを残すのがこのテンプレの狙いです。

Dither は Master の L4 だけ:Dither はプロジェクト最終段に1回だけ。各トラックには絶対に入れません(重ねると劣化)。テンプレでは Master の L4 の Dither を ON、他は全部 OFF が正解です。

このマスター段で使っているプラグイン(Plugin Boutique)
Softube Tape・iZotope Ozone・Waves L4。セール時に揃えるとかなり安く組めます
Softube Tape Ozone 11 Waves L4

7. ミックスのコツ(詰まったときに読む)

相補EQ=キックとベースの棲み分け

キックとベースは同じ低域で鳴るのでぶつかります。やることは「全部カット」ではなく、相手が一番鳴っている周波数を、自分側で少し避けることです。

3060110250500Hz キックの山 60〜70Hz ベースは同じ所を −1〜2dB ベースの山 110Hz キックは同じ所を −1〜2dB Kick Bass
お互いの「山」を相手側で1〜2dBだけ避ける。狭い部屋で2人が半歩ずつ引く感じ。全部カットするのではなく、噛み合わせる。

ロールオフ・モノ・音圧

BPM・キーの確認や、書き出しのラウドネス/True Peak チェックには、当サイトの無料ツールBPM・キー検出ラウドネス診断)も使ってみてください。


8. パラアウト運用ルール


使用プラグイン一覧(このテンプレで使っているもの)

私が実際に使っている構成です。プラグイン名から各ストアに飛べます。持っていないものは、上の各「お持ちのプラグインで再現するなら」で自分の機材に置き換えられますので、無理に全部揃える必要はありません。

用途プラグイン
ローカット / EQZL Equalizer 2(無料・全トラックのローカット/FXリターンで使用)
仕上げEQ(グラフィック)Waves API 560
インテリジェントEQWaves Curves Equator
自動ダイナミクスWaves IDX Intelligent Dynamics
コンプWaves H-Comp / Renaissance Compressor
サイドチェインWaves C1 Compressor(キック→ベースのダッキング)
トランジェントNI Transient Master
低域補強Waves MaxxBass
テープ/質感Waves Kramer Master Tape / XLN RC-20 Retro Color / Inphonik RX950
ステレオ幅AIR Stereo Width(Pro Tools / バンドル付属の簡易ワイドナー)
センター調整(M/S)Waves Center(出過ぎた音の抑え・主にStrings)
バスグルーNI Solid Bus Comp(Komplete付属)/代替:Waves PuigChild 670
リバーブValhalla VintageVerb(直販)
ディレイPro Tools Mod Delay III(標準)
マスターSoftube Tape / iZotope Ozone 11 / Waves L4
アナライザーBlue Cat's FreqAnalyst(無料)

Wavesはバンドルでまとめ買いが正解

今回のチェーンは大半が Waves です。1台ずつ買うと高くつきますが、バンドルなら1台あたりが一気に安くなります。そもそもWavesのバンドルは、1本に数十〜100本以上のプラグインが詰まっていて、しかもほぼ常時8〜9割引という驚きの安さ。1本あたりに直すと数百円クラスになる計算で、コスパは本当にすごいです。どれを選ぶかは「今回のどのプラグインまで欲しいか」で決めればOK。下の表で、本記事で使う10個がどのバンドルに入っているかを整理しました(2026年時点・改定される場合あり)。

本記事のプラグインGoldPlatinumMercuryUltimate
収録プラグイン数40+67約190240+
セール価格(現在)¥28,254
79%OFF
¥35,361
89%OFF
¥355,210
73%OFF
サブスク
定価(日本表示・変動)¥139,270¥348,440約¥132万
API 560
Curves Equator
IDX Intelligent Dynamics
H-Comp
Renaissance Compressor
MaxxBass
Kramer Master Tape
L4 Ultramaximizer
C1 Compressor
PuigChild 670
本記事の10個をカバー4/104/1010/1010/10
選び方の目安
・まず安く土台を作るなら Gold(C1・H-Comp・MaxxBass・RComp)
・マスタリングの L2/L3 まで欲しいなら Platinum
・本記事の10個を買い切りで丸ごと揃えたいなら Mercury(Kramer・PuigChild に加え Curves Equator・IDX・L4 も収録)
・サブスクで常に最新版まで使いたいなら Ultimate。または足りない1〜2個だけ単体で買い足すのもアリ

Wavesのバンドルはほぼ常時セール中です(Gold/Platinum は8〜9割引も珍しくありません)。上の価格は現在のセール価格ですが、時期で変わるので最新はリンク先で確認してください。

Curves Equator や IDX、L4 だけを単体で足したい場合は、上の「使用プラグイン一覧」のリンクから個別に購入できます。まずはお持ちのEQ・コンプで本記事の「順番と役割」を再現してみて、足りないところをバンドルで補うのが、いちばんムダのない進め方だと思います。

Waves以外(バンドル対象外・別メーカー):マスター段の TapeOzone やリバーブ・アナライザーは Waves ではないので、バンドルとは別に用意します。

まとめ

Boom Bap のミックスは、突き詰めるとルーティングを固定して、カテゴリごとの標準チェーンを決めるだけ。あとはパラアウトを貼れば、毎回同じ「自分の音」で仕上がります。量産するほど、この“決め打ち”の効果が効いてきます。

紹介したプラグインは私の構成ですが、大事なのは順番と役割(EQ→均し→質感→コンプ→相補EQ、低域はモノ、上はロールオフ、音圧は攻めすぎない)の方です。ここさえ押さえれば、お持ちの機材でも十分に近づけます。

まずは週末に、テンプレートを1つ作り切ってみてください。次のビートから、ミックスがぐっと速くなるはずです。それでは、良いビートメイクを!

※ 本記事はアフィリエイトリンク(PR)を含みます。リンク経由でも価格は変わりません。掲載の数値は私の制作環境での出発点であり、最終的には耳とメーターで調整してください。