Boom Bapミックステンプレートの作り方|パラアウトを貼るだけで“自分の音”に仕上げる量産テンプレ

ビートを作るのは楽しいのに、いざミックスとなると急に腰が重い……。トラックごとにEQを立ち上げて、コンプを挿して……と毎回同じ作業をイチから繰り返すのが正直めんどくさくて。しかも「前はどんな設定にしてたっけ?」と毎回思い出すのも地味に手間で、ミックスに取りかかるのが億劫だったんです。
そこで作ったのが、このBoom Bap専用のミックステンプレートです。ルーティングとチェーンをあらかじめ組んで固定しておき、パラアウト(各パートの書き出し)を決まったトラックに貼るだけ。もう毎回プラグインを挿し直す必要がなくなり、しかも毎回同じ質感=「自分の音」で仕上がります。ミックスに取りかかるハードルが下がって、量産するときに本当に楽になりました。
この記事では、私が実際に使っているテンプレートの全ルーティング・トラック別のチェーン・数値まで丸ごと公開します。使っているプラグインも全部紹介しますが、持っていなくても大丈夫。お持ちのEQやコンプで同じ「考え方」を再現できるように、要点も一緒に書いています。
狙うのは、Pete Rock / Lord Finesse / J Dilla / Joey Bada$$ / Da Grassroots のような、丸くて埃っぽい上物+ブーミーで太いドラム。キラキラさせず中域重視、ステレオは狭め、音圧は攻めすぎずパンチを残す方向です。想定は Pro Tools・85〜95bpm ですが、考え方はどのDAWでも同じです。
パラアウト前の「音作り」は別記事にまとめています →この記事はパラアウトを貼った後の仕上げの話です。サンプルの選び方やループそのものを太くする音作りは、こちらの記事へ。先に音を作り込んでからこのテンプレに貼ると効果的です。
① ルーティング(誰がどのバスに行くか)を固定する。
② カテゴリごとの標準チェーンを決める。
この2つさえ決まれば、あとは音を貼るだけです。細かいコツは、詰まったときに読み返してもらえればOK。
1. 全体ルーティング
サブバスは2系統です。ドラム/パーカスは Drum Bus、鍵盤・弦は 上物バス にまとめて、それぞれにグルーコンプ。Bass だけは独立させて Master に直で送ります(理由は下で説明します)。Reverb / Delay はセンドで受けます。
なぜ Bass だけ独立させるのか
Bass を Drum Bus に入れると、バスのグルーコンプがいちばん大きい低音=ベースに反応してしまい、ドラム全体がベースのリズムでポンピング(連動して沈む)します。独立させれば、Drum Bus のグルーは「生ドラムだけ」に効いて、狙いどおりにまとまります。これはかなり効くので、最初に押さえておいてください。
| バス | 受けるトラック | 処理 |
|---|---|---|
| Drum Bus | Kick / Snare / Hihat / Sleigh Bell / Shaker | グルーコンプ 4:1・GR 3〜6dB |
| 上物バス | Piano / Rhodes / Strings(+上ネタ) | グルーコンプ 2:1・GR 1〜2dB |
| Bass(独立) | Bass のみ | 単体処理のみ → Master 直 |
| Master | 全体集約 | Tape → Ozone → L4(Ceiling −1.0) |
2. トラック別の標準チェーン
各トラックの「インサート順」と、Boom Bap向けの狙い所です。数値は出発点。最後は耳で微調整してください。プラグイン名にはリンクを付けていますが、持っていない場合は各セクションの「お持ちのプラグインで再現するなら」を見れば、自分のEQ・コンプで同じことができます。
・ZL Equalizer 2(無料の高機能EQ)=このテンプレでは各トラック頭のローカットに使っています。FabFilter Pro-Qに影響を受けた無料EQで、可変周波数+スロープの本物のハイパスにアナライザーを内蔵。「不要な低域だけを、耳と目で確認しながらクリーンに削れる」——という理由でこの用途に充てています。Pro ToolsのEQ IIIなど手持ちのハイパスでも同じことができます。
・IDX=周波数依存の自動ダイナミクス(チェーンの下地)
・H-Comp / RComp=コンプ(キャラ付け/音量ならし)
・Curves Equator=濁り・被りを自動で整理するインテリジェントEQ(※HPF/LPF用ではありません)
・Kramer Tape / RC-20 / RX950=テープ・ローファイの質感
・API 560=チェーンの最後段に置くグラフィックEQ。最後の任意の手動EQ微調整(トーンのブースト/ロールオフ)用。フェーダーを数本動かすだけでいいのが魅力(=シンプル)。
つまり各チェーンの先頭の「ローカット◯◯Hz」は、すべて先頭の ZL Equalizer 2(または手持ちのハイパス)で行っていると読んでください。濁り・被りの自動整理は Curves Equator が担当し、「上を10-12kHzでロールオフ」などトーンの最終微調整はチェーン最後段の API 560で仕上げます。
まとめると、ローカット=先頭の ZL Equalizer 2、最後の仕上げEQ=最後段の API 560です。
ちなみに最初にローカットしておくと、そのあとコンプをかけたときに"欲しい帯域"がきれいに持ち上がります(不要な低域でコンプが無駄に反応しないため)。IDX も同じく下地を整える役割です。
なお IDX・Curves Equator・RC-20・テープ系の“かけ具合(量)”は、数値というより耳で合わせてください。IDXは主ノブ1つを軽め〜中程度、Curvesは自動解析後に効きを少しだけ、テープ/RC-20はうっすらが基本。どれも「かけすぎない」のがBoom Bapのコツです。
無料でローカット用のEQを探すなら、いま最強は ZL Equalizer 2。FabFilter Pro-Qに影響を受けて作られた無料EQで、可変スロープの本物のハイパス・最大24バンド・ダイナミックEQまで備え、「これで無料?」という完成度です。EQ III や Pro-Q を持っていなくても、各トラック頭のローカットはこれ1台で十分こなせます。
さらに余裕があれば、このチェーンに味付けのEQ処理(好みの帯域を軽くブースト/カット)を足したり、トラック同士のマスキング(帯域の被り)も整えてみてください。マスキング処理を手っ取り早くやりたいときは sonible pure:unmask がおすすめ。AIが2つのトラックの被りを自動で避けてくれるので、サイドチェインを繋いでプロファイルを選ぶだけ(=Curves Equatorの自動整理と同じ発想を、より手軽に)。Plugin Boutiqueで購入できます。
なぜ最初にローカットなのかというと、ミックスで一番混雑しやすいのが低域だからです。
どの楽器にも多少の低音は含まれています。必要のないローエンドまで積み重なると、キックやベースの居場所がなくなり、全体がモコモコと濁って聴こえてしまいます。
逆に言えば、最初に不要な低域を整理しておくだけで、その後のEQやコンプもずっと判断しやすくなります。私はミックスを始めるとき、まず最初に各トラックのローカットを済ませることがほとんどです。
ローカットで得られること
ローカットは「低音を減らすため」の処理ではありません。不要な成分だけを取り除いて、必要な低音を活かすための作業です。その結果として、
・キックやベースが埋もれにくくなる
・ミックス全体がクリアになる
・コンプやリミッターが余計な低域に反応しにくくなる
・ヘッドルームに余裕ができ、音圧も上げやすくなる
といったメリットがあります。
私がやっているローカットの手順
難しいことはしていません。まずソロで聴きながら、音のキャラクターが変わらないギリギリまでハイパスフィルターを上げます。そのあと必ずオケ全体で聴き直します。ソロでは問題なくても、ミックスの中では細くなりすぎることもあるからです。最後に必要なら少し戻して完成。この「ソロで探して、全体で確認する」という流れだけ覚えておけば十分です。
もちろん、キックやベースのように低域が主役の楽器は別。そういったトラックは基本的にローカットしないか、行うとしてもかなり慎重に判断します。
使用するEQ
ローカットはどんなEQでもできますが、アナライザーが付いているものだと作業がかなり楽になります。無料で始めるなら、私は ZL Equalizer 2 をおすすめします。アナライザーを見ながらハイパスフィルターを調整できるので、「耳だけでは判断しづらい」という人にも使いやすいEQです。この記事で「◯◯Hzでローカット」と書いている部分は、このEQでも、手持ちのEQでも同じように再現できます。
Kick → Drum Bus
【IDX(Soft)】まず下地として軽く。
【ZL Equalizer 2】ローカット(サブソニックなど不要な低域を削る)。
【H-Comp(PhatKick)】GR 3〜4dB でパンチを付ける。
【Curves Equator(Kick)】濁り・被りを自動で整理。
【API 560】最後に手動でEQ微調整:重心 60〜100Hz を軽く上げ/150〜300Hz のこもりを少し下げ/クリックを 2〜4kHz で少し(8kHz以上は不要)。
狙いは、サブより「ドスッ」を優先。
Bass → 独立 → Master
【IDX(Soft)】下地として軽く。
【Kramer Tape】うっすら歪ませてグリット。
【H-Comp(Bold Bass)】キャラ付けコンプ。
【Curves Equator】キックの山(60〜80Hz)をベース側で1〜2dB避ける(相補EQ)+濁り整理/上は 4〜5kHz でロールオフ気味。
【RComp】音量ならし(Ratio 3.99/Atk 0.50/Rel 5.00/Gain 0.0/Warm)。
【MaxxBass】最後に倍音を足して可聴化(クロスオーバー 60〜80Hz 目安)。コンプの後ろに置くことで、足した倍音を潰さず・低域のポンピングも避けられます。
【低域処理】120Hz以下は必ずモノ/25〜30Hz以下はHPF。
Snare → Drum Bus
【IDX(Soft)】下地。
【Kramer Tape】強めにかけてザラつきを。
【RComp】Ratio 2.00/Gain 3.3/Atk 0.50/Rel 5.00/Warm でレベルを均す。
【Curves Equator(Snare)】濁りを自動で整理。
【API 560】最後に手動でEQ微調整:胴鳴り 180〜250Hz を少し足して太く/パチッを 3〜5kHz/8kHz以上のシャリを抑える。
あわせて Reverb センドは多めに。
Hihat → Drum Bus
【ZL Equalizer 2】ローカット(低域 300〜500Hz 以下を削る)。
【Curves Equator(Hi Hat)】濁りを自動で整理。
【API 560】最後に手動でEQ微調整:上を 10〜12kHz でロールオフ(キラキラさせない)。
音量は控えめでドラムに馴染ませる。
Sleigh Bell / Shaker → Drum Bus
【ZL Equalizer 2】ローカット(低域を大きく削る)。
【Curves Equator(Bell / Percussion)】濁りを自動で整理。
【API 560】最後に手動でEQ微調整:高域を 10〜12kHz でロールオフ。
細かく刻む音なので音量は控えめに(Hihat と同じパーカス標準)。
Piano → 上物バス
【IDX(Soft)】下地。
【ZL Equalizer 2】ローカット(100〜120Hz 以下を削ってキック・ベースの場所を空ける)。
【Curves Equator(Piano)】濁りを自動で整理。
【RComp】上ネタ共通の設定(Ratio 1.30/Atk 0.50/Rel 5.00/Gain 3.0/Warm)でレベルを軽く均す。
【RC-20(Vinyl 2)】ローファイな質感を足す。
【RX950】必要ならサンプラー感を追加(任意)。
【API 560】最後に手動でEQ微調整:上を 10〜12kHz で LPF して埃っぽく。
Rhodes → 上物バス
【IDX(Soft)】下地。
【ZL Equalizer 2】ローカット(100〜120Hz 以下を削る)。
【Curves Equator(Electric Piano)】濁りを自動で整理。
【RComp】上ネタ共通(Ratio 1.30/Atk 0.50/Rel 5.00/Gain 3.0/Warm)。エレピは揺れが出やすいのでレベルを均す。
【RC-20】質感を足す(任意)。
【API 560】最後に手動でEQ微調整:上をロールオフして角を取る。
Strings → 上物バス
【IDX(Soft)】下地。
【ZL Equalizer 2】ローカット(100Hz 以下を削る)。
【Curves Equator(Strings)】濁りを自動で整理。
【RComp】上ネタ共通(Ratio 1.30/Atk 0.50/Rel 5.00/Gain 3.0/Warm)。
【Stereo Width】広げても 110〜130% までに留める(100%が原音。広げすぎない)。
【API 560】最後に手動でEQ微調整:上を 10〜12kHz で LPF。
【Center(任意)】センターに出過ぎた成分が気になる時に、Waves Center で中央成分だけ下げて整える(M/S)。
あくまで奥に敷く役です。
その他の上ネタ(シンセ/サックス/ギター等)の当てはめ方
上ネタは全部 上物バス に送り、Piano/Strings と同じ並び(EQ → 均し → Curves Equator → 軽いコンプ → 質感)から始めてOK。変えるのは「コンプ量」と「上のロールオフ量」の2つだけです。
- サックス・生楽器・管楽器:音量の揺れが大きいのでコンプ強めでレベルを均す。中域と息のニュアンスは残す。耳につく 2〜5kHz を軽く抑える。埃感が欲しければ上をロールオフ。
- シンセ(パッド/リード/プラック):音量が一定なのでコンプは軽くてOK。パッドは Strings 扱い、リード/プラックは Piano 扱い。デジタルで明るいものほど上を強めに LPF して角を取る。
- ギター:Piano と同系。生っぽさを残しつつ、上をロールオフして馴染ませる。
- ベース的なシンセ:上物バス ではなく Bass 枠へ(低域モノ・キックと棲み分け)。
① 生・ダイナミックな音ほどコンプを強めに(サックス > ギター > シンセ)。
② 明るい音ほど上を強めにロールオフ。
チェーンの並びは全上ネタ共通で使い回せます。
3. サンプリングした上ネタ(2チャンネル用意)
チョップしたサンプルは、それ自体に低音が入っているか否かで扱いが変わります。違いは実質「頭のハイパスの位置」だけ。2つのプリセットチャンネルを用意して使い分けます。どちらも 上物バス 送りです。
① サンプルにベースなし(自分のベースを足す)
② サンプルにベースあり(サンプルが低音も兼ねる)
EQ:まず出力を −3dB 下げてから——
・低域が薄い → 60Hz付近をピーキング(中くらいのQ)で +7dB
・輪郭を出す → 400Hz付近を少しきつめのQで +2dB(アナログ感)/−2dB(スッキリ)
・ハイファイに → 9kHz以上をシェルビングで +2dB(好みで)
コンプ:ループはすでに音圧があるので、かけすぎると逆に音圧が下がります。Ratio 1.3:1・アタック/リリース最短・メイクアップ +3dB から(EQで下げた −3dB を取り戻す程度)。オーバーしない所までスレッショルドを下げればOK。
※上ネタの RComp(Ratio 1.30/Atk 0.50/Rel 5.00/Gain 3.0)も、この考え方に沿った設定です。
フィルターがかったサンプルの質感:LPF(上)と HPF(下)で帯域を挟んで絞ると、あの「フィルター済みサンプル」の音になります(Pete Rock / J Dilla 多用)。私のおすすめは Inphonik RX950。名機 Akai S950 をエミュレートしたプラグインで、内蔵フィルターと12bit変換を通すだけで、あのザラっとくすんだ“サンプラー通し”の質感が一発で出ます。サンプルに元から入っているドラム/ノイズが邪魔なら、そこを削って“上物だけ”を抽出するのも定番です。
4. ベースの種類別のコツ(エレキ/ウッド/サブ)
枠組み(低域モノ・キックと棲み分け・上をロールオフ)はどのベースでも共通。違いは「どの帯域を大事に残すか」だけです。
| 種類 | 大事に残す所 | 処理のコツ |
|---|---|---|
| サブベース (808/シンセ) | 超低域(土台) | 中身がほぼ低域。モノ管理とキックとの音量バランスが主役。必要ならキックから軽くサイドチェイン。上は不要なのでカット。 |
| エレキベース | 中域 200〜800Hz+指のニュアンス | その中域を削りすぎない(スマホで聞こえる芯はここ)。サブは808ほど要らない。テープ/RC-20 でグリット。 |
| ウッドベース (コントラバス) | 低中域 150〜300Hz の木の温かみ+アタックの"ボン" | コンプは軽めにして生の跳ねを殺さない。上をロールオフしてヴィンテージ感を出す。ジャジーな路線に合います。 |
① 120Hz 以下はモノ。
② キックの一番鳴る周波数をベース側で1〜2dB避ける(相補EQ・後述)。
③ 25〜30Hz 以下(サブソニック)はハイパスで落とす。
① キーに合わせてチューニング(各ノートのピッチ/グライド)。外れた808は全部とケンカします。テールの長さも整えて濁りを防ぐ。
② 可聴化はEQでなくサチュ/歪みで。純粋な808は小型スピーカーに成分が無いので、下の「並行歪みレイヤー」(808を複製 → コピーをガッツリ歪ませ → 120〜200HzでHPF → クリーンな808の下に薄く混ぜる)が特に効きます。
③ キックと808の住み分け。下の「キック→ベースのサイドチェイン」で一瞬だけダッキング+相補EQで、どちらかが深いサブ(40〜80Hz)、もう一方がノック(100〜200Hz+2〜4kHz)を担当。
※Trap寄りの808なら、サチュとサイドチェインは強め、高域は削らない方向に振るとハマります。
サブの可聴性は「EQ」ではなく「サチュ/MaxxBass」で作る
これは知っておくと得します。純粋なサブ(サイン波に近い音)は上に成分が無いので、EQで持ち上げても何も出てきません。一方サチュレーション(歪み/テープ)は倍音を“生成”できるので、スマホやノートPCの小型スピーカーで「ベースが聞こえる」手がかりを作れます。物理的にこれが正解です。
- 本命は MaxxBass(倍音生成専用)。クロスオーバーをサブの基音あたり(60〜80Hz目安)に。本物の低域を保ちつつ、倍音をスマホで“聞こえる”最小量まで上げる。上げすぎると細く/うるさくなります。
- 代わり/追加:Kramer Tape や RC-20 の歪みでも倍音は足せます。ドライブは軽く(数dB)うっすらと。強く歪ませると濁ります。
おすすめ:並行歪みレイヤー(サブ1本運用に最適)。サブを複製 → コピーだけガッツリ歪ませる → その歪みコピーを 120〜200Hz でハイパス(=倍音だけ残す)→ クリーンなサブの下に薄く混ぜる。低域はクリーンのまま、可聴性(倍音)だけ足せます。
キック→ベースのサイドチェイン
ベースにサイドチェイン付きコンプを挿し、キー入力にキックを送ります。キックが当たった瞬間だけベースが少し引っ込んで、キックの重心が濁らず前に出ます。私は C1 comp-sc を使っています。Boom Bap は“ポンピングさせる”のが目的ではなく、“キックに一瞬だけ場所を空ける”のが目的なので、ごく浅くが鉄則です。
| パラメータ | 推奨値 | 狙い |
|---|---|---|
| キー入力 | Kick(サイドチェイン) | キックの信号でベースをトリガー |
| Ratio | 2:1 〜 4:1 | 浅め。強い比率にしない |
| Threshold | GR が 1〜3dB になる所 | Boom Bap は 1〜2dB で十分 |
| Attack | 5〜15ms | キックのアタック直後に素早く下げる |
| Release | 60〜150ms(Auto可) | 次のキックまでに戻す |
| Knee | Soft | 自然に効かせる |
5. FXリターン(Reverb / Delay)
リバーブ/ディレイは各トラックのセンドで受けます。本体はいじらず、送る量で深さを決めるのがコツ。目安は、スネアに一番多く(ドラムの奥行き)、鍵盤に少し、キックとベースには送らない(低域が濁るため)。
Reverb(センド受け)
Delay(センド受け)
6. バス処理とマスター
Drum Bus(グルー)★Boom Bap の要
Transient Master でノック(ドラムの当たり)を出す:Attack=最初の一撃、Sustain=余韻・胴鳴りを増減。これで「パンチを足す」「タイトに締める」を作ります。※Attack/Sustain は dB ではなく約 −100〜+100 の相対目盛りなので、耳で「当たりが気持ちよく出る最小量」で止めます。
- ドラムバス(まずこれ):グルーコンプの後に置く。Attack を軽く(目盛りの1〜2割)/ Sustain 0〜少しマイナス。
- 個別 Kick/Snare(追い込み):各トラックのコンプの前に。Kick=Attack やや強め/Sustain −(締める)。Snare=Attack 中程度/Sustain 好み。
- Hihat/パーカスは基本不要。全トラックに挿す必要はありません。上げすぎると「カチカチ」して不自然になるので、当たりが気持ちよく前に出る最小量で。
上物バス(グルー)
Master(最終段)
ラウドネスの補足:この −10〜−9 LUFS は“リース/商用のラウド”向けの数値です。Spotify などの配信は約 −14 LUFS に正規化して音量を下げるので、配信で不利になるわけではありませんが、上げれば上げるほど有利…という競争でもありません。ラウドネス診断ツールで自分の書き出しを測っておくと安心です。なお −14 LUFS より大きい“ラウド”な音源を配信する場合、Spotify はトゥルーピークを −2 dBTP 以下にすることを推奨しています(ロッシー変換時のクリップ回避)。上を攻めるなら Ceiling を −1.0 → −2.0 dBTP にしておくと安全です。
なお最適なラウドネスはジャンルでも変わります。トラップやドリルは配信側で −14 前後に正規化される前提で、あえてもっと大きめ(目安 −7〜−9 LUFS)に仕上げる作風も一般的です。Boom Bap はそこまで攻めず、パンチとダイナミクスを残すのがこのテンプレの狙いです。
Dither は Master の L4 だけ:Dither はプロジェクト最終段に1回だけ。各トラックには絶対に入れません(重ねると劣化)。テンプレでは Master の L4 の Dither を ON、他は全部 OFF が正解です。
7. ミックスのコツ(詰まったときに読む)
相補EQ=キックとベースの棲み分け
キックとベースは同じ低域で鳴るのでぶつかります。やることは「全部カット」ではなく、相手が一番鳴っている周波数を、自分側で少し避けることです。
ロールオフ・モノ・音圧
- ロールオフ:ある周波数から上(または下)を、崖ではなく坂でだんだん下げること。「10〜12kHz でロールオフ」=12kHz より上をなだらかに絞る=キンキンが減って埃っぽくなる。SP-1200/MPC っぽいくすんだ質感になります。
- モノ:低域(120Hz 以下)はモノに。スマホや小型スピーカーで安定し、キックとベースが濁らない。ステレオは広げすぎず、モノ再生でも痩せない音像を保つ。
- 音圧:統合 −10〜−9 LUFS 目安。攻めすぎるとパンチとダイナミクスが死ぬ。L4 の Ceiling は必ず −1.0 dBTP。
BPM・キーの確認や、書き出しのラウドネス/True Peak チェックには、当サイトの無料ツール(BPM・キー検出/ラウドネス診断)も使ってみてください。
8. パラアウト運用ルール
- パラアウト規格を統一:同じサンプルレート/ビット深度、全部を曲頭(1小節目)からゼロ位置、テールを切らない、マスター処理なし(プリマスター)。
- 貼る位置を固定:テンプレのトラック順とパラアウトの並びを常に同じに(例 01_Kick / 02_Snare …)。
- Delay は曲ごとに SYNC のテンポを合わせるだけ(音価固定で自動追従)。
- 書き出しプリセットを保存:タグ入りMP3 / タグなしWAV / Trackout用ステム。
- リファレンスを2曲テンプレに読み込み、音圧・帯域を合わせる。
使用プラグイン一覧(このテンプレで使っているもの)
私が実際に使っている構成です。プラグイン名から各ストアに飛べます。持っていないものは、上の各「お持ちのプラグインで再現するなら」で自分の機材に置き換えられますので、無理に全部揃える必要はありません。
| 用途 | プラグイン |
|---|---|
| ローカット / EQ | ZL Equalizer 2(無料・全トラックのローカット/FXリターンで使用) |
| 仕上げEQ(グラフィック) | Waves API 560 |
| インテリジェントEQ | Waves Curves Equator |
| 自動ダイナミクス | Waves IDX Intelligent Dynamics |
| コンプ | Waves H-Comp / Renaissance Compressor |
| サイドチェイン | Waves C1 Compressor(キック→ベースのダッキング) |
| トランジェント | NI Transient Master |
| 低域補強 | Waves MaxxBass |
| テープ/質感 | Waves Kramer Master Tape / XLN RC-20 Retro Color / Inphonik RX950 |
| ステレオ幅 | AIR Stereo Width(Pro Tools / バンドル付属の簡易ワイドナー) |
| センター調整(M/S) | Waves Center(出過ぎた音の抑え・主にStrings) |
| バスグルー | NI Solid Bus Comp(Komplete付属)/代替:Waves PuigChild 670 |
| リバーブ | Valhalla VintageVerb(直販) |
| ディレイ | Pro Tools Mod Delay III(標準) |
| マスター | Softube Tape / iZotope Ozone 11 / Waves L4 |
| アナライザー | Blue Cat's FreqAnalyst(無料) |
Wavesはバンドルでまとめ買いが正解
今回のチェーンは大半が Waves です。1台ずつ買うと高くつきますが、バンドルなら1台あたりが一気に安くなります。そもそもWavesのバンドルは、1本に数十〜100本以上のプラグインが詰まっていて、しかもほぼ常時8〜9割引という驚きの安さ。1本あたりに直すと数百円クラスになる計算で、コスパは本当にすごいです。どれを選ぶかは「今回のどのプラグインまで欲しいか」で決めればOK。下の表で、本記事で使う10個がどのバンドルに入っているかを整理しました(2026年時点・改定される場合あり)。
GoldGoldを見る →
PLATINUM
PlatinumPlatinumを見る →
MERCURY
MercuryMercuryを見る →
ULTIMATE
Ultimate(サブスク)Waves公式で見る →
| 本記事のプラグイン | Gold | Platinum | Mercury | Ultimate |
|---|---|---|---|---|
| 収録プラグイン数 | 40+ | 67 | 約190 | 240+ |
| セール価格(現在) | ¥28,254 79%OFF | ¥35,361 89%OFF | ¥355,210 73%OFF | サブスク |
| 定価(日本表示・変動) | ¥139,270 | ¥348,440 | 約¥132万 | — |
| API 560 | — | — | ✓ | ✓ |
| Curves Equator | — | — | ✓ | ✓ |
| IDX Intelligent Dynamics | — | — | ✓ | ✓ |
| H-Comp | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ |
| Renaissance Compressor | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ |
| MaxxBass | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ |
| Kramer Master Tape | — | — | ✓ | ✓ |
| L4 Ultramaximizer | — | — | ✓ | ✓ |
| C1 Compressor | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ |
| PuigChild 670 | — | — | ✓ | ✓ |
| 本記事の10個をカバー | 4/10 | 4/10 | 10/10 | 10/10 |
・まず安く土台を作るなら Gold(C1・H-Comp・MaxxBass・RComp)
・マスタリングの L2/L3 まで欲しいなら Platinum
・本記事の10個を買い切りで丸ごと揃えたいなら Mercury(Kramer・PuigChild に加え Curves Equator・IDX・L4 も収録)
・サブスクで常に最新版まで使いたいなら Ultimate。または足りない1〜2個だけ単体で買い足すのもアリ
Wavesのバンドルはほぼ常時セール中です(Gold/Platinum は8〜9割引も珍しくありません)。上の価格は現在のセール価格ですが、時期で変わるので最新はリンク先で確認してください。
Curves Equator や IDX、L4 だけを単体で足したい場合は、上の「使用プラグイン一覧」のリンクから個別に購入できます。まずはお持ちのEQ・コンプで本記事の「順番と役割」を再現してみて、足りないところをバンドルで補うのが、いちばんムダのない進め方だと思います。
Waves以外(バンドル対象外・別メーカー):マスター段の Tape・Ozone やリバーブ・アナライザーは Waves ではないので、バンドルとは別に用意します。
Softube Tape見る →
Ozone 11
iZotope Ozone 11見る →
VintageVerb
Valhalla VintageVerb見る →
FreqAnalyst
Blue Cat's FreqAnalyst無料DL →
まとめ
Boom Bap のミックスは、突き詰めるとルーティングを固定して、カテゴリごとの標準チェーンを決めるだけ。あとはパラアウトを貼れば、毎回同じ「自分の音」で仕上がります。量産するほど、この“決め打ち”の効果が効いてきます。
紹介したプラグインは私の構成ですが、大事なのは順番と役割(EQ→均し→質感→コンプ→相補EQ、低域はモノ、上はロールオフ、音圧は攻めすぎない)の方です。ここさえ押さえれば、お持ちの機材でも十分に近づけます。
まずは週末に、テンプレートを1つ作り切ってみてください。次のビートから、ミックスがぐっと速くなるはずです。それでは、良いビートメイクを!