Tracklibレビュー・使い方|実在曲を合法サンプリングできる料金とライセンス【2026年】
好きなレコードから切り出したサンプルでビートを作りたい。でも、それを売ったり配信したりするのは怖い。サンプリングが好きな人なら、一度はこの壁にぶつかったことがあると思います。
厄介なのは、この壁が音作りの話ではなく権利の話だということです。サンプルクリアランス入門で書いたとおり、既存の録音を使うには原盤権と著作権の両方について許諾がいります。個人が権利者を探して交渉するのは、率直に言ってほぼ不可能に近い。
その交渉の部分をまるごとサービスにしてしまったのが、スウェーデン発のTracklib(トラックリブ)です。レーベルや出版社と契約済みの実在するリリース楽曲をダウンロードでき、リリースに必要なサンプルクリアランスまでサイト内で終わらせられます。ここまで一括で面倒を見てくれるサービスは、現在かなり珍しい存在です。
この記事では、2026年7月時点でTracklibのサイトとヘルプセンターを調べ、料金プラン、クリアランスの仕組み、そして「BeatStarsのtype beat販売に使えるのか」までまとめました。ロイヤリティフリー素材との違いや権利処理の基本は、姉妹記事サンプルクリアランス入門もあわせてどうぞ。
Tracklibとは?——「サンプリングのためのレコード店」
Tracklibは、サンプリングのためだけに作られた音楽サブスクです。サイト上では自らを「The Home of Sampling」と名乗っていて、中身は大きく3つに分かれます。
- Songs:ライセンス処理済みの実在のオリジナル楽曲100,000曲以上。ソウル、ジャズ、ファンクから世界各国の音源まで、レーベルと契約したうえで提供される「本物のリリース楽曲」で、一部はステム(マルチトラック)も用意
- Sounds:ロイヤリティフリーのループ・ワンショット500,000点以上。こちらはクリアランス不要で、一般的なサンプルパック素材に近い位置づけ
- デスクトップアプリ/モバイルアプリ:DAWへのドラッグ&ドロップや外出先でのディグに対応
利用者としてJ. ColeやKendrick Lamar、DJ Khaledといった名前が紹介されていて、コンセプトは「クレートディギング(レコード掘り)を合法的にやる」。90年代的なサンプリングの作り方をそのまま持ち込める場所としては、今いちばん現実的な選択肢です。
サービス紹介動画があるので、全体像はこれを見るのが早いです。
▶ YouTubeで見る(TRACKLIB公式チャンネル)
仕組み:クレジット制ダウンロード+リリース時クリアランス
① クレジットでダウンロードする
加入すると毎月クレジットが配られ、これを使ってカタログから音源を落とします。ヘルプセンターによると、未使用のクレジットは有料プランを続けている間は翌月に繰り越せます。同じトラック(やその一部)を落とし直すのにクレジットは減りません。ただし解約するとクレジットは使えなくなる(入り直せば復活します)ので、辞めるときは使い切ってからにしましょう。
② リリース前に「クリアランス(ライセンス登録)」をする
Songsの楽曲を使った曲を公開・リリース・収益化するときは、先にサンプルライセンスを取っておきます。サイト上の案内では、「Your Licenses」から5ステップほど登録するだけで、数分で終わるとのこと。Soundsの素材はロイヤリティフリーなので、この手続きはいりません。
③ リリース後は「レベニューシェア」で分配する
Tracklibを使ううえで一番覚えておきたいのが、この収益分配の仕組みです。Songsをサンプリングした曲は、その曲が生む収益(原盤収益と出版収益の両方)の一部を、元の曲の権利者と分け合います。割合は「サンプルした曲のカテゴリ」と「使ったサンプルの長さ」で決まるレートカード方式で、収益は最低でも6か月ごとに報告する必要があります。提携ディストリビューター経由なら、ストリーミング収益の報告と支払いは自動化できるとも案内されています。
つまりTracklibは、買い切って自由に使えるサービスではありません。権利者にきちんと分配することを前提に、実在曲のサンプリングを合法化する仕組みです。
料金プラン(2026年7月時点)
先に結論を言うと、多くのビートメイカーはPremiumで十分です。クリアランス費用が月額に含まれるので、実際にリリースまで持っていくつもりなら、いちばん計算が立つプランになります。
プランは3段階。かつては曲のカテゴリごとにクリアランス費用を都度払うモデルでしたが、今はPremiumとMaxに「無制限サンプルクリアランス」が付き、クリアランスごとの費用はかからない形に変わっています。
| プラン | 月額(USD) | 主な内容 |
|---|---|---|
| Lite | $8.99 | Songsカタログへのアクセス。SoundsとクリアランスはPremium以上の特典のため、リリース時はカテゴリ別のライセンス料が別途必要(Tracklibのブログでは多くの曲がカテゴリCで$50) |
| Premium | $13.99 | 毎月375クレジット、Sounds(ロイヤリティフリー素材)、無制限サンプルクリアランス、デスクトップ/モバイルアプリ |
| Max | $19.99 | クレジット増量(執筆時点の表記で650クレジット)、Sounds、無制限サンプルクリアランス |
※2026年7月時点で編集部がTracklibのサイト・ヘルプセンター等から確認した情報です。表示価格は請求条件(月払い・年払い)や地域の税により変わる場合があります。無料トライアルも用意されていますが、日数・付与クレジットは時期により変動するため、申込前に必ず最新の表示をご確認ください。
ひとつ勘違いしやすいのが、「無制限クリアランス」の範囲です。無料になるのはクリアランス手続きの費用だけで、さきほどのリリース後のレベニューシェアはどのプランでも発生します。
Tracklibは商用利用できる?
できます。というより、商用利用のために作られたサービスです。ただし「素材を買ったから、あとは自由」という買い切り型とは考え方が違うので、そこだけ押さえておきましょう。
- Soundsのループ・ワンショット:ロイヤリティフリー。ダウンロードした時点で商用に使えて、追加の手続きも分配もありません
- Songsの実在楽曲:商用に使えますが、公開する前にライセンス登録が必要で、リリース後は収益の一部を元の権利者と分けます
YouTubeやSNSに上げる、配信に出す、ビートとして売る——Songs側から見ればどれも「公開=リリース」に当たります。人目に触れる前にクリアランスを済ませておく、と覚えておけば大きく外しません。
BeatStarsでのtype beat販売に使える?
ここがいちばん気になる人が多いはずです。結論から言うと、FAQに「Can I sell beats that contain Tracklib samples?」という項目があり、条件付きで可能とはっきり書かれています。
公開の場でビートを売る場合(BeatStars・SNS・自サイト等)
- BeatStarsのようなプラットフォームやSNSなど公の場でビートを公開する前に、そのビート自体のライセンス登録(クリアランス)が必要
- ビートにISRCが必要。ディストリビューター経由でリリースしない場合は、各国のISRC発行機関から取得する必要があると案内されています
- 「Tracklibのサンプルを含むこと」「購入者がリリースにはTracklib経由のライセンス取得が必要なこと」を明示する義務がある
- 一方で、ビート販売(リース)の売上そのものをTracklibに報告・分配する必要はないと明記されています
購入者(アーティスト)側の手続き
- ビートを買ったアーティストが曲をリリースするには、購入者自身がTracklibでライセンスを取得する必要があります。無料アカウントでライセンス料を支払うか、Premium/Maxプランに加入すればライセンス費用はサブスクに含まれます
- プロデューサーは自分の登録(どの曲をどれだけ使ったか)を購入者に送信でき、購入者はその情報を引き継いでクリアランスできます
- リリース後の収益報告(最低6か月ごと)は購入者側の義務になります
非公開でのやり取り・独占販売の場合
レーベルや特定のアーティストに非公開でビートを送るだけなら、事前のライセンスはいりません(サンプルを含む旨は伝える必要があります)。独占(エクスクルーシブ)販売で自分の手を離れた場合は、収益報告を済ませて販売を止めたうえでサポートに連絡すれば、自分側のライセンスを終了できるとも書かれています。
type beat運用の実務としては、「公開前にクリアランス」「商品説明にサンプル使用を明記」「購入者への引き継ぎ」の3点がセットになります。
メリット・デメリット
メリット
- 好きなレコードを堂々と切って使える。これができるサービスは、今のところほとんど他にありません
- Premium以上ならクリアランス費用が月額込みなので、「この曲も使えるかな?」と料金を気にせず掘れます
- 権利者への分配が仕組みになっているぶん、リリースしたあとに「あとから請求が来るかも」と怯えずに済みます
- ロイヤリティフリーのSoundsも付いてくるので、Splice的な使い方も1契約でまかなえます
デメリット・注意点
- 曲が売れたら収益を分けて、半年に一度は報告する。買い切り素材の気楽さはありません
- ビート販売のときはISRCの取得やサンプル使用の明記が要るので、売り出すまでの手数が多い
- 解約するとクレジットが使えなくなるので、貯め込んでから辞めると損をします
- 10万曲あっても「あの曲」があるとは限りません。並んでいるのは契約できた曲だけです
こんな人におすすめ
- ソウルやジャズのレコードを掘って切りたい、Boom Bap/Lo-Fi系のビートメイカー
- サンプリングした曲を、配信リリースまでちゃんと出したいプロデューサー
- 面倒な権利交渉ではなく、ビート作りに時間を使いたい人
逆に、type beatを量産して手離れよく売りたいだけなら、手続きの少なさではSpliceやLoopmastersのロイヤリティフリー素材に分があります。権利の基礎と使い分けはサンプルクリアランス入門で詳しく書いています。
よくある質問
Q. Tracklibで作ったビートをBeatStarsなどで販売(type beat販売)できますか?
A. FAQでは、条件付きで可能とされています。公の場でビートを出す前に、そのビート自体のライセンス登録とISRCの取得が必要で、Tracklibのサンプルを含むことを購入者に伝える義務があります。ビート販売の売上そのものを分ける必要はありませんが、購入者はリリース時に自分でライセンスを取ることになります。
Q. サンプルクリアランス費用はいくらかかりますか?
A. Premium・Maxには無制限のサンプルクリアランスが含まれるので、クリアランスごとの追加費用はかかりません。ただしリリース後は、曲のカテゴリとサンプルの長さに応じた比率で収益(原盤・出版の両方)を元の権利者と分けます。
Q. Tracklibは商用利用できますか?
A. できます。Soundsのループ・ワンショットはロイヤリティフリーで、そのまま商用に使えます。Songsの実在楽曲も商用に使えますが、公開する前のライセンス登録と、リリース後の収益分配がセットになります。
Q. Soundsセクションの素材にもクリアランスは必要ですか?
A. 不要です。手続きが必要なのはSongsの実在楽曲をサンプリングしてリリースする場合だけで、Soundsのループやワンショットはロイヤリティフリーとして提供されています。
Q. 解約するとクレジットやダウンロード済み音源はどうなりますか?
A. ヘルプセンターによると、未使用クレジットは有料プランを続けている間は繰り越せますが、解約後は使えなくなります(入り直せば復活)。辞める前に使い切っておくのが無難です。
まとめ
サンプリングを武器にしたいビートメイカーにとって、Tracklibはかなり魅力的な選択肢です。
もちろん、収益分配やライセンス登録など、ロイヤリティフリー素材に比べれば手間は増えます。それでも「好きなレコードを合法的に使って、自分の作品として世に出せる」という価値は大きい。サンプリング文化を大事にしたい人ほど、一度は試す価値があると思います。
要点を3つに絞ると——
- カタログは実在楽曲100,000曲以上+ロイヤリティフリー素材500,000点以上
- Premium/Maxはクリアランス費用込み。ただしリリース後の収益分配と報告は、どのプランでも発生します
- type beat販売は条件付きでOK。公開前のライセンス登録・ISRC・サンプル使用の明記が必須です
ロイヤリティフリー素材を使う、自分で弾く、といった他の選択肢との使い分けはサンプルクリアランス入門で整理しています。自分の作り方に合った、無理のない形を選んでください。