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今週の注目ヒップホップニュース一気読み(2026年8月29日号)

Suge Knight

写真: Nick Leisure / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

今週は、法廷が大詰めを迎える一方で、金曜の新譜が一年でも指折りの豊作になった一週間でした。ラスベガスで進む2Pac殺害裁判は弁護側が立証を終え、来週月曜の最終弁論から評決へと向かいます。Lil Durkの連邦裁判もロサンゼルスで審理が続いています。そして8月28日の金曜には、Rod Waveの7作目、Erykah BaduとThe Alchemistの約15年ぶりの共作、Fat Joeの原点回帰作、Kendrick Lamarが参加したDJ Dahiのデビュー作までが一斉に到着。今週の動きを、編集部の基準(報道の広がり・数字の裏付け・規模・今週性)で注目度の高いものから11本お届けします。

🎤 今週のヒップホップ関連ニュース

2Pac殺害裁判、いよいよ結審へ 弁護側が立証を終え、来週月曜に最終弁論

Tupac Shakur

写真: State of California DMV / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

前号でも証言の段階に入ったとお伝えした、Duane "Keffe D" Davis(63歳)の裁判が、今週いよいよ大詰めを迎えました。1996年にラスベガスで2Pacが銃撃されて亡くなった事件をめぐる殺人裁判で、8月27日(木)に弁護側が立証を終え、審理は結審に近づいています。証拠調べは合計9日間に及び、最後は元ラスベグス市警の警察官3人が証言に立ちました。被告人であるDavis自身は、証言台に立たない選択をしています。

陪審は来週月曜(9月1日)に法廷へ戻り、検察・弁護双方の最終弁論を聞いたうえで評議(有罪か無罪かを話し合う手続き)に入る予定です。検察は、Davisが自ら引き金を引いたとはしておらず、襲撃を計画し指示を出した側だという立場です。ネバダ州の法律では、殺害計画に加わったと認められれば、実際に撃ったのが別人でも殺人罪に問えます。DavisはこれまでのインタビューでKeffe D自身が「甥が撃った」と語ってきたと弁護側は主張していますが、その甥はすでに亡くなっています。前号でも触れた通り、事件当時2Pacの隣に座っていたSuge Knight(上の写真)は証言を拒む姿勢を崩さず、証言台に立たないまま審理は結審へと向かいました。評決が出れば、この長く未解決だった事件に一つの区切りがつくことになります。

出典: The Washington Times / CNN

Lil Durkの連邦裁判、ロサンゼルスで審理進行中 「殺しの依頼」を巡る大型公判

Lil Durk

写真: JD Sports / Wikimedia Commons(CC BY 3.0)

8月20日にロサンゼルスの連邦地裁で始まったLil Durk(本名Durk Banks、33歳)の裁判は、今週も審理が続いています。起訴の中身は、他人に人を殺させようとした罪、いわゆる「殺しの依頼(murder-for-hire=報酬などと引き換えに殺害を頼む行為)」です。検察は、Durkが「暗号のような言い回し(coded language)」を使って実行役を雇い、2022年8月にロサンゼルスで白昼の銃撃を実行させたと主張しています。狙いはラッパーのQuando Rondoだったものの、実際にはそのいとこSaviay'a "Lul Pab" Robinsonが撃たれて亡くなりました。検察はこれを、2020年に亡くなったKing Vonへの報復だと位置づけています。

裁かれるのはDurk本人と、彼のレーベルOnly the Family(OTF)の関係者5人です。公判前には、シカゴ絡みで新たに追加された罪状(RICO=組織犯罪の罪などの複数の訴因)を本件から切り離して別に審理する、という弁護側の申し立てが認められました。つまり、今ロサンゼルスで進んでいるのは「殺しの依頼」に的を絞った裁判ということになります。Durkは無罪を主張しており、有罪となれば終身刑の可能性があります。彼の楽曲の歌詞を証拠として使う是非も、あらためて争点になりそうです。

出典: Courthouse News / Rolling Stone / Wikipedia

Rod Wave、7作目『Don't Look Down』を配信 全24曲+34公演のアリーナツアー

Rod Wave

写真: Wiknown77 / Wikimedia Commons(CC BY 4.0)

フロリダ出身のRod Waveが8月28日(金)、通算7作目のアルバム『Don't Look Down』をAlamoから配信しました。配信版は全24曲、フィジカル(2枚組アナログ盤とCD)は20曲という構成です。客演はSummer JoyとLuv Vonの2組だけで、大半を自分の歌で通す、いつもの作りです。先行曲「Feed the Streets」「Piece of Your Love」「Hustle」では、ピアノ主体のソウルフルなトラックに、感傷的なバラードと成功をめぐる内省が乗る、Rod Waveらしい世界が広がります。

ロールアウト(発売前後の展開)は、葬式をモチーフにしたMainstay Films制作のトレーラーに始まり、Fridayyを帯同する34公演のアリーナツアーへと続きます。ヒットチャートを狙う派手さよりも、聴き手の心情に寄り添う歌で数字を積み上げてきた人だけに、今週の金曜でも商業的にいちばん大きな一枚になりそうです。

出典: Power 99 / Billboard

Erykah BaduとThe Alchemist、約15年ぶりの新作『Before the World Blows』

Erykah Badu

写真: Danielle G. Campbell / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

ネオソウルの象徴的存在Erykah Baduと、ヒップホップ屈指の名プロデューサーThe Alchemistが組んだ共作アルバム『Before the World Blows: The Abi and Alan Experiment』が、8月28日にデジタル配信されました。Baduにとっては15年以上ぶりのアルバムで、キャリアの節目となる一枚です。制作はダラスとロサンゼルスを往復しながら約18か月をかけて行われ、Westside Gunn、DRAM、Steve Lacy、Thundercatらが客演しています。

2024〜2025年にかけて、二人はこのアルバムを丸ごとライブで「試走」させていました。携帯電話を預ける少人数の会場で、Baduのデジタル集団The Cannabinoidsと、MPC(サンプラー/ドラムマシン)を叩くAlchemistが、完成前の曲を客の前で鳴らしていたのです。じっくり作り込まれた背景を知ると、今週の新譜の中でもとりわけ「腰を据えて聴きたい」一枚だと分かります。

出典: The Source / Consequence

DJ Dahi、Kendrick Lamar参加のデビュー作『Black Boy (Alternative)』

Kendrick Lamar

写真: Fuzheado / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

Kendrick Lamarやトップアーティストのトラックを数多く手がけてきたプロデューサーDJ Dahiが、8月28日に自身のデビューアルバム『Black Boy (Alternative)』を配信しました。話題の中心は、Kendrick LamarとR&BシンガーAmber Markが共演した「How to Pray」です。ブラジル風のアコースティックギターを取り入れた入り組んだトラックの上で、二人がメロディックに歌う一曲で、同時にミュージックビデオも公開されました。

客演はKendrickとAmber Markにとどまらず、Childish Gambino、Vince Staples、Channel Tres、Moses Sumney、Fousheé、Ravyn Lenaeらが名を連ねます。全11曲を通して、ヒップホップとR&Bの下地に、オルタナやロックへの引力を重ねた、プロデューサー主導ならではの一枚です。作り手の視点で「音づくり」を追いたいビートメイカーにとっても、聴きどころの多い作品になりそうです。

出典: Consequence / Stereogum

Fat Joe、原点回帰の『Organized Rhyme』 Cool & Dreが全面プロデュース

Fat Joe

写真: Sandra Alphonse / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

ブロンクスのレジェンドFat Joeが8月28日、新作『Organized Rhyme』を配信しました。全12曲で、キャリアの土台となったゴツゴツしたリリック、ストーリーテリング、ニューヨーク仕込みの態度に立ち返った一枚です。タイトルは「Organized Crime(組織犯罪)」をもじった言葉遊びで、そこにヒップホップらしい捻りを効かせています。プロデュースはグラミー受賞コンビのCool & Dreが全面的に担い、ブロンクスのエネルギーに合ったサウンドに仕上げています。

客演も豪華で、Pusha T、Yung Miami、Jadakiss、そしてTerror Squadの盟友でブロンクス出身のRemy Maらが参加。エンジニアリングはMike Deanが手がけました。Jay-ZやNasがシーンを席巻していた頃の空気を懐かしむ人には、たまらない古典的なギャングスタ・ラップへのラブレターのような作品です。

出典: HipHop-N-More / Bronx Times

俳優Tom Hardy、Czarfaceと組んでラップアルバムを発表

Tom Hardy

写真: Gage Skidmore / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)

アカデミー賞ノミネート歴を持つ俳優Tom Hardyが、Frankie Pulitzerという名義でラップに挑んだアルバム『Czarface Meets Frankie Pulitzer』を8月28日にリリースしました。共演のCzarfaceは、Wu-Tang ClanのInspectah DeckとEsotericらによるユニットで、コミック的な世界観を売りにしています。本作はそのCzarfaceの「Meets」シリーズ(過去にはMF DOOMやGhostface Killahと組んだ)の系譜に、Frankie Pulitzerを迎え入れた一作という位置づけです。

客演にはBusta Rhymes、Method Man、El-P、Kendra Morrisらが参加。収録曲には先行公開の「Brothers Grimm」に加え、Busta Rhymes参加の「Raw Forever」、Method Man参加の「Mad Technology」などが並びます。Hardyは2021年のEP『Good Guys, Bad Guys』でも同じFrankie Pulitzer名義でマイクを握っており、今回はその延長線上での本格的なアルバムということになります。俳優の余技という枠を越えて、今週いちばん話題を呼んだ変化球の一枚でした。

出典: Rolling Stone / XXL

Yung Miami、バイラルヒット「Spend Dat」リミックスにLil BabyとKodak Black

Yung Miami

写真: HOTSPOTATL / Wikimedia Commons(CC BY 3.0)

Yung Miamiが8月28日、今年の思わぬヒット曲「Spend Dat」のオフィシャル・リミックスを公開しました。新たに加わったのはLil BabyとKodak Blackの2人です。原曲は4月にJ. White Did Itのプロデュースで出た一曲で、TikTokを中心にバイラル(SNSで一気に拡散すること)し、Billboard Hot 100で自己最高の17位まで上昇。多くのアーティストに引用される、今年らしいカルチャー現象になっていました。

フロリダ・マイアミ出身のMiamiに、同じくフロリダのKodak Black、そしてアトランタのLil Babyが加わり、サウス勢が顔をそろえた形です。バイラル曲に大物のバース(ラップの一節)を足してもう一段押し上げる、という王道のリミックス。夏の終わりのプレイリストにそのまま入る一曲です。

出典: HotNewHipHop / Hip-Hop Wired

Kanye West(Ye)、10月にロシア公演を予定と報道

Kanye West

写真: Wikimedia Commons(CC BY 3.0)

Kanye West(Ye)が10月にロシアで公演を行う予定だと報じられました。会場はサンクトペテルブルクで、2公演が予定されているとされています。近年のYeをめぐっては、発言や動向が繰り返し物議を醸してきただけに、この公演の是非についてもさまざまな受け止めが出ています。

音楽的な新作の話題ではありませんが、大物アーティストの動向として広く取り上げられた一報です。開催地や情勢を含め、確定した内容は今後の公式発表を待つ必要があります。現時点では報道ベースの情報として押さえておきたいニュースです。

出典: HotNewHipHop

Young Thug側、ツアーバス銃撃を巡る訴訟の棄却を申し立て

Young Thug

写真: MILLION DOLLAZ WORTH OF GAME / Wikimedia Commons(CC BY 3.0)

Young Thug(本名Jeffery Williams)の弁護団が、Lil Wayneのツアーバス銃撃をめぐってバス運転手が起こした民事訴訟について、棄却を求める申し立てを行いました。法廷の外での動きが続くベテラン勢の一人として、今週の法務系ニュースの中でも目を引いた一件です。

この訴訟は音楽制作とは直接関係しませんが、係争中の案件であり、主張はあくまで各当事者のものです。確定した事実ではない点に注意しつつ、今後の審理の行方を見守る必要があります。

出典: HotNewHipHop

来週の予定:9月4日の新譜と、2Pac裁判の評決

来週はまず月曜(9月1日)に、ラスベガスの2Pac殺害裁判で最終弁論が行われ、そのまま陪審の評議に入る見込みです。評決がいつ出るかは評議次第ですが、週の前半の最大の焦点になりそうです。音楽面では、5年ぶりの復帰が予告されているIsaiah Rashadの新作など、9月4日の金曜にも注目のリリースが控えています。

8月の豊作な金曜が続いたのに続き、9月に入っても勢いは止まりません。裁判の結果とあわせて、来週号でお伝えします。

出典: Complex

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各ニュースは公開元の情報をもとに編集部が要約したものです。掲載写真は Wikimedia Commons の CC ライセンス素材またはパブリックドメイン素材(各写真にクレジット表記)で、アルバムジャケットや報道写真は転載していません。掲載順は「報道の広がり・数字の裏付け・規模・今週性」を基準に編集部が判断したものです。係争中の案件については各当事者の主張であり、確定した事実ではありません。リリース日・裁判の状況は執筆時点(2026年8月29日)の情報であり、最新の内容は各公式サイト・出典元をご確認ください。