メロディーループの作り方|コード進行テンプレ10個とスケールの基礎
ビートの印象は、多くの場合、ドラムより先に鳴るメロディーループ(上ネタ)によって決まります。とはいえ、「コードが分からないから毎回ループ素材に頼ってしまう」という人も多いのではないでしょうか。
覚えるのはキーとスケールの最低限だけです。あとはAマイナーでそのまま打ち込めるコード進行を10個用意しました。度数表記も併記しているので、慣れてきたら他のキーへ移調することも簡単です。最終的には、8小節のメロディーループを自力で作れるようになることを目指します。
1. キー選び——迷ったらAマイナー
キーとは、「曲がどの音を中心に成り立ち、どの音の集合を使うか」を決めるものです。ヒップホップ・トラップ・ローファイではマイナーキー(短調)が圧倒的多数派で、練習用にはAマイナーが最適です。理由はシンプルで、Aマイナー(ナチュラルマイナー)の構成音はA・B・C・D・E・F・G——つまりピアノの白鍵だけで演奏できるからです(Cメジャーと同じ音の集合をAを中心に使う関係で、これを平行調と呼びます)。
参考にしたい曲がある場合は、当サイトのBPM・キー検出ツールに音源を読み込めば、テンポとキーのおおよその見当がつきます。検出結果がAマイナー以外でも、まずはAマイナーで制作し、最後にMIDI全体を移調(トランスポーズ)すれば同じ内容になります。そのため、この記事のテンプレートはそのまま活用できます。
2. スケールの基礎——3つだけ覚える
Aマイナーで作る場合、覚えるスケール(音の地図)は実質3つで足ります。
- Aナチュラルマイナースケール:A・B・C・D・E・F・G。基本の7音。コードもメロディも原則ここから作る
- Aマイナーペンタトニック:A・C・D・E・G。ナチュラルマイナーから2音(BとF)を抜いた5音。どの順で弾いても外れにくく、メロディ作りの安全地帯
- Aハーモニックマイナー:A・B・C・D・E・F・G#。第7音を半音上げた(G→G#)スケール。G#の緊張感がドリルやダークなトラップで多用される
スケールは「使ってよい音だけを並べたルール」ではなく、「外れにくい音を示した地図」と考えると理解しやすくなります。まずはこの地図の中だけで作り、慣れてきたら経過音として地図の外の音を加えていくのがおすすめです。
3. コードの作り方——1つ飛ばしで3音重ねる
コード(和音)は、スケール上の音を1つ飛ばしで3つ重ねるだけで作れます。Aマイナースケールの各音から作ると、次の7つのコード(ダイアトニックコード)が得られます。
| 度数 | コード名 | 構成音 | 響きの性格 |
|---|---|---|---|
| i | Am | A・C・E | 主役。始まりと帰る場所 |
| ii° | Bdim(Bm♭5) | B・D・F | 不安定。単体では使いにくい上級枠 |
| III | C | C・E・G | 明るい。マイナー曲の中の晴れ間 |
| iv | Dm | D・F・A | 切なさを足す |
| v | Em | E・G・B | Amへ戻る流れを作る |
| VI | F | F・A・C | エモーショナル。iの次に頻出 |
| VII | G | G・B・D | 推進力。次のコードへ押し出す |
度数(ローマ数字)は「キーの何番目の音の上に建てたコードか」を表し、大文字はメジャー、小文字はマイナー、°はディミニッシュを意味します。度数で覚えておくと、キーが変わっても同じ設計図が使い回せます。
4. コード進行テンプレート10個【Amキー実音例つき】
ここからが本題です。1コード=1〜2小節で鳴らし、4コードで1周(4〜8小節)するのが基本形。まずは①をピアノロールに打ち込むところから始めてください。
| # | 度数表記 | Amキーでの実音例 | 雰囲気・使いどころ |
|---|---|---|---|
| ① | i – VI – III – VII | Am – F – C – G | 最重要の定番。エモ系トラップ、ポップ寄りの曲まで万能 |
| ② | i – VII – VI – VII | Am – G – F – G | 行って戻る反復感。メロディックなType Beatに |
| ③ | i – iv – VII – III | Am – Dm – G – C | 4度ずつ進む王道の循環。ジャジー・ソウルフルな流れ |
| ④ | i – VI – VII – i | Am – F – G – Am | 最後にしっかり帰る安定形。ループ耐性が高い |
| ⑤ | i – III – VII – VI | Am – C – G – F | ①の並べ替え。少し明るく開けた印象 |
| ⑥ | i – v – VI – III | Am – Em – F – C | 切なさ強め。ローファイ・チル系に |
| ⑦ | VI – VII – i – i | F – G – Am – Am | i以外から始めて後半でAmに落ちる。ドラマチック |
| ⑧ | i – VI – iv – V | Am – F – Dm – E | 最後のE(E・G#・B)はハーモニックマイナー由来。強い緊張→解決 |
| ⑨ | im7 – iv7 – VII7 – IIImaj7 | Am7 – Dm7 – G7 – Cmaj7 | 4和音のジャジー版③。ローファイ・ネオソウルの定番 |
| ⑩ | iim7♭5 – V7 – im7 | Bm7♭5 – E7 – Am7 | マイナーのツーファイブワン。ジャズ感を一気に出せる3コード |
⑨⑩で使う4和音の構成音は次のとおりです:Am7=A・C・E・G/Dm7=D・F・A・C/G7=G・B・D・F/Cmaj7=C・E・G・B/Bm7♭5=B・D・F・A/E7=E・G#・B・D。⑧のE(トライアド)はE・G#・Bです。G#はナチュラルマイナーに含まれない音ですが、ハーモニックマイナー由来の定番の借用で、Amに戻ったときの解決感が段違いに強くなります。
5. コードの上にメロディを乗せる
進行が鳴ったら、その上に単音のメロディを乗せます。理論的な安全策は次の2つだけです。
- 拍の頭はコードトーンに置く:Amが鳴っている小節ならA・C・Eのどれか。ここが合っていれば、間を繋ぐ音は多少自由でも成立します
- 迷ったらペンタトニック:A・C・D・E・Gの5音だけでフレーズを作れば、どのコードの上でも大きな事故になりにくい
構成のコツは「呼びかけと応答」です。2小節のフレーズ(呼びかけ)を弾いたら、次の2小節は同じリズムで終わりの音だけ変える(応答)。これだけで8小節が「ループっぽく、でも単調でない」形になります。仕上げに、フレーズの一部をオクターブ上に複製したり、ディレイとリバーブで空間を足したりすると、Type Beatらしい上ネタになります。
できあがったループをビートに発展させる工程——ドラムを乗せる、展開を作る——はドラムのレイヤリングとスウィング設定に続きます。また、既製のサンプル素材を活用して上ネタを作るアプローチはSpliceの使い方で解説しています。
6. 音色を強化したい場合
打ち込む内容が同じでも、音源の質感によってループの完成度は大きく変わります。無料で始めるなら、無料プラグインまとめで紹介しているシンセやピアノ音源だけでも十分に制作できます。より本格的なウェーブテーブルシンセを使いたくなったら、定番のSerum 2(レビュー記事参照)が有力な選択肢です。
よくある質問
Q. ビートのキーはどうやって決めればいいですか?
A. 参考にしたい曲のキーに合わせるのが手早い方法です。BPM・キー検出ツールに音源を読み込めばキーの見当がつきます。ヒップホップ・トラップではマイナーキーが主流で、学習用には白鍵だけで弾けるAマイナーが扱いやすいです。慣れたら808やベースが鳴りやすい音域になるよう、最後に移調して調整します。
Q. スケールから外れた音は使ってはいけないのですか?
A. 禁止ではありません。スケールは「外れにくい音の地図」であってルールではなく、経過音として半音を挟んだり、ハーモニックマイナー由来のG#(Aマイナーの場合)を使ったりするのは常套手段です。ただし慣れないうちはスケール内の音+コードトーン中心で作ると破綻しにくくなります。
Q. コード進行そのものに著作権はありますか?
A. 一般的な短いコード進行そのものは、ありふれた表現として著作権保護の対象になりにくいと考えられており、実際に多くのヒット曲が同じ進行を共有しています。ただし特定の曲のメロディや録音をコピーすることは別問題です。本回答は一般的な情報であり法的助言ではありません。
Q. 3和音と4和音(セブンスコード)はどう使い分けますか?
A. トラップやドリルなど硬質なジャンルでは3和音やその一部だけを使うシンプルな響きが好まれ、ローファイやR&B系では7thを加えた4和音(テンプレ⑨⑩)が定番です。まず3和音で進行を組み、柔らかくしたい箇所だけ7thを足すと扱いやすいです。
まとめ
- 学習用のキーはAマイナー(白鍵のみ)。参考曲のキーはBPM・キー検出ツールで調べ、最後に移調すればよい
- スケールはナチュラルマイナー・ペンタトニック・ハーモニックマイナーの3つで当面十分
- コードはスケール上の音を1つ飛ばしで3つ重ねるだけ。度数で覚えれば全キーに応用できる
- 進行テンプレ10個はまず①(Am–F–C–G)から。メロディは「拍頭はコードトーン+迷ったらペンタトニック」
理論は、ループを速く作るための道具にすぎません。まずは10個のテンプレートを一通り打ち込んでみてください。繰り返し試していくうちに、既製ループに頼らず、自分だけの上ネタを作る感覚が自然と身についていくはずです。