なぜ90年代Boom Bapはあんなに太い音なの?SP-1200とS950が生んだ伝説のサウンド

私はヒップホップが好きです。特に Pete Rock や Lord Finesse あたりが大好きです。
90年代の独特な太い音質って、いかにも Boom Bap なヒップホップって感じで、めちゃくちゃかっこいいですよね。
Lord Finesse や Pete Rock、The Beatnuts、Large Professor など、今でもループを聴いているだけで引き込まれます。あの少しこもったような黒い音、本当に最高です。
「あの音ってどうやったら出せるんだろう?」
Boom Bap が好きな人なら、一度は思ったことがあるんじゃないでしょうか。
実は、あのザラっとした質感や太いサウンドには、当時使われていたサンプラーが大きく関係しています。今回は、その秘密を少し掘り下げながら、最後に私が実際に使っているプラグインも紹介したいと思います。
Boom Bapを語るなら外せない「SP-1200」
90年代のヒップホップを代表するサンプラーといえば、E-MU社のSP-1200です。

ヒップホップでは、昔からあるレコードなどの音源を録音し、一部分だけ切り取って新しい曲として作り直す「サンプリング」という手法がよく使われています。
今では PC があれば何時間でも録音できますし、ストレージ容量を気にすることもほとんどありません。でも当時は全然違いました。
SP-1200で録音できる時間は、モノラルで約10秒。
今考えると、「え、それだけ?」って思いますよね笑。でも、そのわずか10秒という制限の中で、数え切れないほどの名曲が生まれてきました。
サンプリング時間が短いからこそ生まれたテクニック
10秒しか録れないとなると、そのままでは長いループなんて録音できません。そこで、多くのプロデューサーが使っていたテクニックがあります。
それが、レコードを45回転で再生して録音し、そのあとピッチダウンする方法です。
45回転で録音すると、同じ10秒でもより長いフレーズを取り込めます。そして録音したあとに元のテンポまでピッチダウンすると、長いループとして使えるようになるわけです。
今では DAW やプラグインでも簡単にできることですが、当時は限られたサンプリング時間をやりくりするための知恵だったんですね。
あのザラっとした音の正体
SP-1200 が今でも人気なのは、単純に古い機材だからではありません。
SP-1200 は 12bit・約26kHz という、現在のサンプラーや DAW よりも低い解像度でサンプリングを行います。最近の MPC や DAW では 24bit・44.1kHz や 48kHz が一般的なので、それと比べるとかなり粗い録音になります。
でも、この"粗さ"こそが SP-1200 最大の魅力なんです。
さらに、45回転で録音したサンプルをピッチダウンすると、高域が少し丸くなり、低域に独特の厚みが生まれます。これによって、あのザラっとしていて、少しこもったような太い Boom Bap サウンドが出来上がります。
昔の機材だから性能が低かった。……というよりは、その「性能の制限」が、結果的に唯一無二のサウンドを生み出したと言った方が近いかもしれませんね。
でも、SP-1200だけでは足りなかった
とはいえ、約10秒というサンプリング時間では、どうしても限界があります。
「もう少し長いループを使いたい。」「もっと細かくサンプルを編集したい。」
そんな時、多くのプロデューサーが組み合わせて使っていた機材があります。それが AKAIのS950 です。

S950 も SP-1200 と同じ 12bit サンプラーですが、この2台はライバルというより、お互いの弱点を補い合うような存在でした。
SP-1200 の一番の弱点は、やっぱりサンプリング時間です。約10秒という制限では、ドラムなら問題ありませんが、長いループやメロディを扱うには少し厳しい場面もあります。
そこで活躍したのが S950 でした。S950 は SP-1200 よりも長いサンプリング時間を確保できるだけでなく、サンプルのトリミングやループ編集なども細かく行えます。
さらに、アナログVCF/VCAを搭載しているので、独特の温かいフィルターサウンドも魅力でした。このフィルターがまた、めちゃくちゃ気持ちいいんですよね…。
もちろん、「あの音」は SP-1200 だけで作られたわけではありません。SP-1200 の質感と、S950 の編集機能やフィルター。この2台が組み合わさることで、90年代 Boom Bap らしいあの太いサウンドが生まれていたんです。
SP-1200とS950はどうやって使っていたの?
S950 はラックマウント型のサンプラーなので、シーケンサーは搭載されていません。そのため、多くのプロデューサーは MIDI で SP-1200 と接続し、SP-1200 から S950 を演奏していました。
イメージとしてはこんな感じです。
↓
S950でサンプリング・編集
↓ MIDI
SP-1200でパッド演奏・シーケンス
↓
ミキサー
例えば、ドラムは SP-1200、長めのループは S950、ベースも S950 といったように役割を分けることで、限られたサンプリング時間でも効率よくビートを作ることができたんですね。
だから今でも、「SP-1200とS950は黄金コンビ」と言われることがあります。
もちろん、すべてのプロデューサーがこの組み合わせだったわけではありません。SP-1200 だけで名曲を作った人もいますし、MPC シリーズをメインに使っていた人もいます。
ただ、Lord Finesse や Pete Rock など90年代 Boom Bap を代表するプロデューサーたちの制作環境を調べていくと、S950 の名前が出てくることも多く、「なるほど、あの音はこうやって作られていたのか」と思うことがよくあります。
実機を買おうと思ったら…
「じゃあ実機を買えばいいじゃん!」……って思いますよね。私もそう思いました。で、調べてみたんですが…。
その価格……なんと……。
| 機材 | 中古価格の目安 |
|---|---|
| E-MU SP-1200 | 約60万円〜 |
| AKAI S950 | 約22万円〜 |
……高すぎる笑。もちろん状態や付属品によって価格は変わりますが、それでも2台揃えたら 80万円近くになることもあります。
しかも、サイズも結構大きいですし、古い機材なのでメンテナンスも必要になります。憧れはありますが、なかなか気軽には手を出せません…。
じゃあ今の時代はどうする?
そこで私が使っているのが、Inphonik社のRX1200とRX950です。
正直……めちゃめちゃ安いです笑。
セール時なら、RX1200 が $15 前後、RX950 が $10 前後くらいで買えることもあります(通常は RX1200 が約 $29、RX950 が約 $20。2つセットの「RX Bundle」なら約 $39 です)。
実機なら80万円近くする環境が、数千円で体験できると思うと、本当にすごい時代ですよね。
もちろん、実機とまったく同じとは言いません。でも、「あの頃の質感」を制作に取り入れたいなら、十分魅力的なプラグインだと思っています。
RX1200はSP-1200の雰囲気を気軽に楽しめる
RX1200 は、SP-1200 にインスパイアされたサンプラープラグインです。画面も SP-1200 らしいデザインになっていて、サンプルを読み込んでピッチを変えたり、12bit らしい質感を楽しむことができます。
実機を触ったことがある人なら懐かしい気持ちになるでしょうし、私みたいに実機を触ったことがない人でも、「こういう操作感だったんだな」っていう雰囲気を味わえます。
動画が表示されない場合は ▶ YouTubeで見る(Inphonik公式)
RX950は私のお気に入りです
RX950 は、AKAI S950 にインスパイアされたエフェクトプラグインです。こちらはサンプラーというより、「S950 らしい質感」を加えるためのエフェクトというイメージですね。
特にフィルターの雰囲気がすごく気に入っています。「あと少しだけ丸くしたい。」「もう少し90年代っぽい空気感が欲しい。」そんな時によく使っています。
動画が表示されない場合は ▶ YouTubeで見る(Inphonik公式)
私はこんな感じで使っています
私は Maschine をメインにビートメイクしています。RX1200 も Maschine 上で使っているのですが、ちょっと変わった使い方をしています。
普通なら RX1200 の中でドラムキットを組んで使う人が多いと思います。でも私は、Kick なら Kick だけ、Snare なら Snare だけという感じで、パッドごとに RX1200 を立ち上げています。
つまり、Kick 1つのためだけに SP-1200 を1台使うようなイメージです。めっちゃ贅沢な使い方ですよね笑。
もちろん RX1200 の中で全部組んでもいいんですが、それぞれの音に EQ やコンプレッサー、サチュレーターなど別のプラグインを挿したいので、私はこの方法に落ち着きました。プラグインだからこそできる使い方ですよね。実機だったら、さすがにこんな贅沢な使い方はできません。
RX950 も同じです。私はグループバスに挿したり、ドラムだけに挿したり、その時によって使い分けています。
「全部に同じ質感を付ける」というよりは、「この音だけ、もう少し90年代っぽくしたいな。」そんな時に使うことが多いです。
ちょっとフィルターを触るだけでも空気感が変わるので、個人的にはかなりお気に入りのプラグインです。
Boom Bapが好きなら、一度試してみてほしい
もちろん、RX1200 や RX950 を使ったからといって、いきなり Pete Rock や Lord Finesse みたいな音になるわけではありません。結局はサンプリングするネタやチョップのセンス、ドラムの選び方やミックスも大事です。
でも、「あの頃の質感」を取り入れるという意味では、本当に面白いプラグインだと思っています。
私自身、Boom Bap だけじゃなく、Lo-Fi や Neo Soul を作る時にも結構使っています。やっぱり少しザラっとした質感って、クセになるんですよね笑。
購入するならPlugin Boutiqueがおすすめ
今回紹介した RX1200 と RX950 は、私は Plugin Boutique で購入しました。
Plugin Boutique って、セールをやっていることも多いですし、タイミングが良ければ無料でプラグインが付いてくるキャンペーンをやっていることもあります。もちろん、それ目当てで買うというよりは、「おまけが付いてきたらラッキー!」くらいの感覚です。
あと、個人的に一番便利だと思っているのが My Library(購入したプラグインがすべてまとまる管理画面)です。
昔はいろんなショップでプラグインを買っていたので、「あれ、このプラグインどこで買ったっけ?」「インストーラーどこだっけ?」「プロダクトコードどこいった?」みたいなことが結構ありました。
今はできるだけ購入先をまとめるようにしているので、新しい PC に移行するときもかなり楽になりました。地味ですが、この辺も結構大事だったりします。
まとめ
今回は、90年代 Boom Bap サウンドの代表的な機材である SP-1200 と S950 について紹介してみました。
私も最初は「昔の機材だから音がいいのかな?」くらいに思っていましたが、調べてみると、サンプリング時間の制限や 12bit ならではの質感、そして S950 との組み合わせなど、ちゃんと理由があったんですね。
もちろん、今では実機を手に入れるのは簡単ではありません。でも、プラグインなら当時の制作スタイルや雰囲気を気軽に体験できます。
もし90年代の Boom Bap や Lo-Fi、Neo Soul みたいな質感が好きなら、RX1200 や RX950 は一度チェックしてみる価値があると思います。
私もこれからしばらくは、この組み合わせでビートメイクしていこうと思っています。それでは今回はこの辺で!
またおすすめのプラグインや、実際に使ってみて良かった DTM 機材なんかも紹介していこうと思うので、興味があればぜひまた遊びに来てください!